koizumi 2012-09-04 17:12:17
今回は、時効取得における登記原因証明情報について検討してみましょう。
【問い】 Cが、A名義となっているBの土地を短期時効取得(10年)し、その所有権移転登記を申請する場合の登記原因証明情報には、登記の原因となる事実又は法律行為として、「Cは、所有の意思をもって、平穏、公然、善意、無過失で本件土地を10年間継続して占有した。よって、平成○年○月○日、本件土地の所有権は、BからCに移転した。」と記載されていました。
ところが、登記官はすっかり呆れ顔です。この「登記の原因となる事実又は法律行為」の内容のどこに問題があるでしょう?
解説は、次回第15回目の「3分間レッスン」で行います(9月4日UP予定)。 小泉嘉孝
回答順に表示 新しい回答から表示 参考になった順に表示
要件事実はつぎのとおりです
1「所有の意思をもって」
2「平穏かつ公然に」
3「他人の物を」
4「十年間」「占有」
5「占有の開始の時に,善意」
6 5について無過失
4についていつからいつまでの十年か記載する必要があります
推定規定もありますが
5についてもいつ善意であったか記載する必要あります
無過失も立証する必要が原則あります
参考になった:0人
kuril 2012-09-01 14:07:30
小泉先生、こんにちは。
「登記の原因となる事実又は法律行為」の内容として、まず、援用の意思表示がなされた旨の記載がない点に問題があると考えます。また、本件の場合、登記の名義がA名義となっているため、登記名義人でないBが、義務者として申請人となれない、更にAが義務者として申請したとしても、AC間には登記の原因となる事実または法律行為はないため、申請は却下されると考えます。
参考になった:0人
barbie 2012-09-01 15:25:25
占有における善意、平穏、公然は占有の事実があれば186条により推定されます。
無過失は推定されないのでCが実証しないといけませんが、その記載がありません
10年の占有を証明するためには同じ186条を根拠に前後の両時点において占有をした証拠が必要です。これが占有開始時がいつなのかと、時効の援用がいつなのかに相当するのではないでしょうか?
他の方が記入なさっているようにいつ占有開始したのかと、いつ時効援用したのかの記載は必要かと。
この記載だと所有権はBにあるが、まだ登記名義がAに残っていると解釈すれば「本件土地の所有権は、BからCに移転した」という事実自体に関しては問題がないと判断するのはいかがでしょう?もちろん前提としてAからBへの移転登記は必要でしょうが
参考になった:0人
ryopapa 2012-09-01 21:01:49
初歩的なことが分からなくて、申し訳ありませんが、本問の論点が、登記原因証明情報の基本的な性質の捉え方にあるとすれば、売買よる移転登記における売買契約書のように、登記原因が生じていることを、証明する情報でなくてはならないと考え、ryopapaさんの言われるように、186条を根拠に前後の両時点において占有をした証拠情報の添付も必要なのではないでしょうか?
参考になった:0人
image 2012-09-02 02:09:25
登記原因証明情報とは何か。==========共同申請の場合には,登記原因について当該登記によって不利益を受ける者(登記義務者)が確認し,署名若しくは押印した書面又は電子署名を行った情報をさす。---------------------当時の房村民事局長の答弁の要旨より
参考になった:0人
eikuranana 2012-09-02 09:17:59
こんにちわ。登記原因証明情報としての問題点は、①登記名義人でないため登記義務者になりえないBからの所有権移転であること②要件事実のうち無過失については推定規定が置かれていないため証明を要すること、の二点です。①については、この登記の申請に先立ってB名義に所有権を移転しておかなければならず、②については、無過失であることは別途売買証明書等による立証を要すると考えます。
・・・・・そうすると、この「登記の原因となる事実又は法律行為」の記載自体については特に問題がないという結論になってしまいました。なので自信はありません。
参考になった:0人
nijntje 2012-09-02 14:19:36
☆ みなさん、ナイスですね! 論点は、あっという間に出尽くしました。
まず、「登記原因証明情報」とは何か?という原点に戻る発想がすごく大切だと思います。
みなさん「何となく」は理解しているのですが、ここを「何となく」ではなく、カチッと押さえないと、結局、最後の答えもあやふやになってしまいます。
「申請に係る登記の原因となる事実又は法律行為及びこれに基づき現に物権変動等の登記を申請すべき原因が生じたことを登記官に明らかにする情報」という定義を固めておきましょう。
では、最初は簡単なところから検討しましょう。
① 当事者Cが時効を援用した旨の記載がない -正解です。
② Cがいつからいつまで本件土地を占有していたのか -これも必要です。
「平成○年○月○日から、本件土地上に建物を新築し、居住を開始してから10年が経過し、現在も居住している」というような記載が妥当であると思われます。
今回は論点が多いので、今日はここまでにしましょう。
核心部分は、明日!
小泉嘉孝
参考になった:4人
koizumi 2012-09-02 21:42:10
☆ では、昨日の続きです。今回、最大の論点は、「Cは、所有の意思をもって、平穏、公然、善意、無過失で本件土地を10年間継続して占有した。」という記載が認められるかということですね。
昨日、登記原因証明情報とは、「申請に係る登記の原因となる事実又は法律行為及びこれに基づき現に物権変動等の登記を申請すべき原因が生じたことを登記官に明らかにする情報」であると確認しましたが、記載すべきは、まさにこの「事実」又は「法律行為」だということです。
売買であれば、「売買契約を締結した」という法律行為を記載すべきですが、今回は時効取得ですから、法律行為ではなく、「事実」になります。
では、「所有の意思をもって、平穏、公然、善意、無過失」というのが、事実そのものかというと、これらは事実を基にした評価にあたる部分です。つまり、これらは、条文の文言を単に並べただけであって、事実の記載ではないということになります。
ならば、どのような事実を記載すればこれらの要件を満たしていると認定されるかということですが、「本件土地をAの所有する土地と信じて買った」として、「所有の意思」と「善意」を、さらに「本件土地上に建物を新築し、10年間居住を継続した」として、「平穏」と「公然」を明らかにしていくのが望ましいと思われますが、ただ、これらは、民法186条によって推定規定が存在することから、「占有の事実」を明らかにすれば足りるといえます。また、占有開始日は、原因日付に直結していることから、ここも単に平成○年○月○から占有を開始したと記載するのではなく、 「平成○年○月○日から、本件土地上に建物を新築し、居住を開始した」というような具体的状況を記載して、その日から占有が開始された事実を登記官に認定させる必要があります。
一方、「無過失」だけは、その推定規定が存在しない以上、その「無過失を基礎づける具体的事実」を記載しなければなりません。そこで、この具体的事実とはなんだ!というとケース・バイ・ケースで、一概には言えませんが、たとえば、「登記記録に基づいて、現地調査を行った」というような事実がこれに該当すると思われます。
つまり、このような具体的事実の記載が必要であって、「無過失で占有を開始した」と書いているから、「無過失」を認定してくれ!と言っても、それはダメだということです。
明日は、登記義務者を誰にするかという論点を検討しましょう。
あっ、そうそう、今日からFacebookで、【チャレンジマスター】という新たな企画も始めたので、ぜひ見て下さい!
小泉嘉孝
参考になった:7人
koizumi 2012-09-03 20:25:07
☆ では、最後に登記義務者を誰にするかという論点を検討しましょう。まず、登記原因証明情報には、「本件土地の所有権は、BからCに移転した」と記載されていたわけですが、この前主からの移転という表現自体に違和感を覚えませんか? そう、時効取得は、「原始取得」であるからですね。しかし、この原始取得も、2つのパターンに分けることができます。1つは、公有水面埋立や建物新築のように全く新たに不動産が生じた場合の「創設的原始取得」ともう1つが時効取得や即時取得のように単に権利の主体に変更を生じたに過ぎない「移転的原始取得」です。時効取得をこのようにBの所有権が失われ、Cの所有権が生ずるのであるから、あたかも権利がBからCへ移転したような「移転的原始取得」と捉えると、時効完成前の第三者との関係が当事者の関係であり、時効完成後の第三者との関係は対抗関係となるという構成にも繋がりやすく、また今回の「本件土地の所有権は、BからCに移転した」との記載も受け入れやすくなると思います。
次に、誰を登記義務者とするべきかということについては、本件ではCの占有開始当時からAが無権利者であったのであれば、まずBを登記名義人とした上で、Cへの移転登記をすべきであると考えます。
では、Bの土地をCが占有し、時効完成前にBがAに譲渡し、Aがその登記をしている場合はどうでしょう。もちろん、実体的には、その後時効が完成したCはAに対して登記なくして所有権を主張できるということですが、Cが現在の登記名義人Aを登記義務者として移転登記を請求できるかという問題が生じてきます。「年月日
時効取得」の年月日(Cの占有開始日)には、Aはまだ登記名義人となっていなかったからです。実は、この点については先例等の明確な基準は示されていませんが、現在の登記名義人Aを登記義務者とすることができると一般に解されています。そこで、前述のように時効完成前の第三者との関係が当事者の関係であり、移転的な原始取得であるという構成からも、この場合の登記原因証明情報は、「本件土地の所有権は、AからCに移転した。」と記載するべきものと考えます。
小泉嘉孝
参考になった:3人
koizumi 2012-09-04 17:12:17