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/商業登記法:監査の範囲を会計に限定する監査役について

himekichi 2013-05-20 18:41:29

平成15年度の本試験過去問についての質問です。本問での株式会社は、監査役設置会社でその監査範囲は会計に限定されているのですが、非公開会社で取締役会設置会社でもあります。この場合、会社法上の監査役会設置会社は、会計監査限定監査役は含まないのですが(会社法2条9号)、商登法上は会計監査限定監査役を置く場合も監査役設置会社になると習いました。では、本問の会社は取締役会設置会社なわけですが、この状態は会社法での監査役設置義務(会社法327条2項)に反さないということでしょうか。また仮に反さないのであれば、同じく法327条3項は会計監査人を置く場合は監査役を置かなければならないとありますが、商登法上は同様に限定監査役を置いていれば会計監査人を設置しても違法状態ではないということでしょうか。会計監査限定監査役でも会計監査人の独自性を確保する権限を維持できるのか疑問だったので合わせて質問しました。よろしくお願いします。

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法律というのは、常に理論的であるわけではないのです。







会社法担当者のブログより
「「「会社法389条が,非公開会社に会計監査権限の定めを認めているのは
   うちの嫁さんを監査役にして,給料を払いたいけれども,会社が潰れたときに,嫁さんにまで責任を負わせるのは忍びない。
というニーズに応えるためです。

 旧商法では,監査役の設置が義務づけられていましたから,監査役の権限を業務監査にも広げる改正を行うときに,監査役を奥さん,子供,親戚にしている中小企業から大変な反対があり,小会社の監査役については,会計監査権限しか有しないという政治的な決断がされました。

 会社法の制定のときも
  監査役が任意設置になったので,監査役は,常に,業務監査権限を持つことにして,それが嫌なら監査役を置かないという方が合理的ではないか?
という話も持ち上がったのですが,結局は
  既に監査役として給料を貰っている人もいるんだから,現状維持じゃなきゃ困る。
という大きな声があったので,非公開会社については,定款で小監査役にしてもいいという政治的な決断が下されました。」」」」」
引用終了






有限会社法を廃止して、その規定を会社法におしこめた結果、一貫性のない法律となっているのです。
国会議員も、選挙に勝たなければならないから、有権者の声にこたえなければならないのです。


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senpai 2013-05-20 19:41:33

ありがとうございます。結局、商業登記法の書式では会計限定監査役は監査役として扱えば良いということでしょうか。ただこの前解いた模試では、会計監査限定の定款の定めある監査役を設置した会社はその定款の定めを削除しないかぎり会計監査人を設置することは出来ないといった記述がありました。他方、平成15年過去問では会計参与を置いていない取締役会設置会社が会計限定監査役しか置いていないという事例になっています。これは前者は会社法での監査役を基準に会計監査人設置義務を捉えているようであり、後者は商業登記法上の監査役(つまり会計監査限定でも監査役である)を基準にしているように感じるのですが、その点はどうでしょうか。つまり、商業登記法の書式で機関設置義務を考える場合、一貫性のない両法のどちらを基準にすれば良いのかを知りたいのですが・・・。

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himekichi  2013-05-21 17:25:18

会計限定監査役を置くような会社は、中小零細企業です。

こういう会社が、わざわざ高い報酬を払って、公認会計士を雇う余裕も能力もありません。
現実的に考えましょう。

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senpai  2013-05-21 17:45:38

会社法担当者より引用



「「「「監査役会設置会社とは「監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社」(2条9号)のことをいいます。

 ポイントは
1 非公開会社において,監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを置いている会社(389条1項)は,「監査役設置会社」ではないこと
  → 監査役がいるのに,監査役設置会社にならない
2 取締役会設置会社及び会計監査人設置会社は,原則,監査役の設置義務を負っていますが(327条2項3項),これらの会社が定款で監査役を置く旨の定めを置いていなくても,「監査役設置会社」に該当する
  → 監査役がいないのに,監査役設置会社になる
ということです。

今日は,ポイント1について,詳しくお話しします。
 現行の小会社の監査役が会計監査権限しかないのは,小会社の監査役は社長の妻子や親戚等が多いため,会社が倒産したときに,監査役に対し,業務監査義務違反に基づく損害賠償請求がされるようなことがあっては困るからです。
 会社法では,監査役を置かないという選択肢もありますが,「妻に報酬を払うために監査役にしたい。でも,倒産したときの責任は負わせたくない。」という強烈に強いニーズがあるため,非公開会社の監査役の権限を定款で会計監査権限に限定することができるようになっています(注・以上のような,身も蓋もない理由は,試験では書かないでくださいね)。

 このように会計監査権限しか有しない監査役(以下「小監査役(こかんさやく)」といいます。)の制度は,責任限定のための制度ですから,監査役の職務がことごとく免除されていて,通常の監査役の多くの規定が適用されません(取締役会による取締役の責任の一部免除(426条)もできません)。
 権限があまりに違うので,小監査役に,「監査役」とは違う名称を付与しようという計画もあったのですが,「会計監査役」では会計監査人が怒るでしょうし,「小監査役」だと「股間さわる役」と間違われるので(嘘です),監査役という名称のままになりました。

 しかし,監査役設置会社の中に,「小監査役の設置会社」を含めてしまうと,沢山の条文で
「監査役設置会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)」
と書かなければならないため,監査役設置会社の定義から,小監査役の設置会社を覗いて条文の見通しをよくしているわけです。

 ただし,次の規定については,「監査役設置会社」に「小監査役の設置会社」を含むことが明示されていますので,注意が必要です。
1 設立時監査役の選任(38条2項2号),
2 費用請求等(388条)
3 計算書類等の監査関係(436条1項,438条,441条2項,495条,497条)
4 登記(911条3項17号)
(このほか,監査役の選任とその報酬の規定は,小監査役にも適用されます)。

 なお,登記では,監査役か,小監査役かは,区別できませんので,
「なんで会計監査権限に限定されていることを登記させないんだ」
という質問が来ます。
 しかし,現行法だって,資本金1000万円,負債300億円の会社は,大会社になり,監査役に業務監査権限がありますが,そのことは登記されません。監査役の権限が登記から区別できないのは,現行法も同じなのです。
 そう説明すると,「資本金基準で小会社なら,小監査役の可能性があることを予想できるだろ」と食ってかかってくる人もいるのですが,私は,会社法だって「非公開会社なら,小監査役の可能性があることは予想できるよーだ。」と子供のケンカのような反論をしてしまいます。
 そもそも,監査役は,債権者のためではなく,株主のために監査しているのですから,その監査の範囲を公示する意義は乏しいのです。
 債権者にとっては,監査役に業務監査権限があった方が,万一のときに,損害賠償請求できるというメリットがあるかもしれませんが,現実には,そんなことを考えて取引している債権者はいません(小会社と取引したことがない人なんていないでしょ。)
 以上のように,登記しても無益な事項を,あえて会社法で登記事項にする必要はないので,会計監査権限に限定されていることは登記事項から外れているのです。また,こうすることにより,債権者から「おい,あいつは小監査役だぞ」と偏見の目で見られることもなくなるでしょ。」」」」」」


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senpai 2013-05-21 18:28:30

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