司法書士の勉強中に発生する疑問を解決する質問広場

/民訴/民執/不服申し立て/執行抗告

syouhouiya 2013-10-25 12:58:51

いつもありがとうございます。
調べたのですがどうしても理解できにくく民事執行法について質問させて下さい。


執行抗告と執行異議は手続き放棄違反の主張が原則でき、例外として担保権実行の場合の担保権消滅や不存在も主張できるとありました。

でも不動産担保権の実行の開始決定に対しては執行抗告ができないとありました。これはもう覚えるしかないのでしょうか。同じ担保権実行であるのに開始決定ができない理由が釈然とこないです・・・。よろしくお願いします。

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仙台高等裁判所 田中康久より引用


「「「「「担保権実行の課題及びその回避策並びに売却許可決定に対する執行抗告で主張できる事 由の範囲

  執行抗告において、担保権の不存在等の主張が認められるのかどうかについて、裁判実務上は、 不動産競売と債権に対する担保権の実行とでは取扱いに差異があるようですので、その違いがど こからでてきたのかをまず検討したいと思います。



  不動産強制競売における換価権の発生根拠は債務名義にあります。これに対し、担保権に基づ く不動産競売の換価権の発生根拠は、担保権そのものに内在するものであると一般に理解されていま す。そうすると、担保権実行による換価が終わった後でも、当該担保権が存在していなかった場合に は、換価の原因がなかったことになりますので、不動産競売の効果は覆る、買受人は、買い受けた不 動産を取り戻されてしまうという結論になります。民事執行法制定前の競売法時代には、そのような 解釈が判例でしたし、学説上も通説でした。

 そこで、裁判所が関与してなされる競売の効果が覆るという結果を回避することが民事執行法制定 作業の大きな目標の一つでした。そのため、民事執行法の制定に至るまでの検討の過程では、換価の 効果が覆らないとの規定を設けるために、どのような仕組みにすれば足りるのかについて種々の検討 がなされましたが、最終的には、不動産競売については、①一般先取特権による場合を除くほか、担 保権の存在を証する公的文書の提出を要する、②担保権の不存在等を執行異議で主張できる、及び③ 競売停止書面を明確に定めるという条文を設けた上、競売の効果が覆らないという明文の規定を設け たわけです。

  しかし、競売の効果が覆滅しないという規定は、実体的な権利に関するものであり、規定が無 くてもそのような解釈になるべき手続規定でなければなければなりませんが、右の規定の新設だけで 十分なのかどうかが問題となります。すなわち、不動産競売申立ての際に提出が必要な公的文書とい っても、通常実務で利用されるのは登記された抵当権についての登記簿謄本ということになりますが、 登記無効が問題となる事例は稀ではないことからしますと、提出文書を制限しただけでは競売効果の 覆滅を否定する根拠としては十分ではありません。また、旧競売法の下でも、担保権不存在確認訴訟 の提起に伴って競売続行禁止の仮処分も行われていましたから、競売停止文書を明確にしたことも競 売効力の覆滅を否定する根拠としては十分でもありません。さらに、旧競売法時代には、担保権の不 存在等の主張を開始決定に対する異議、異議が認められなかった場合の即時抗告も、また、売却許可 決定に対する異議、異議が認められなかった場合の即時抗告も認められていました。旧競売法時代で は、そのような手厚い取扱いがされた下でも競売効果の覆滅を否定することができなかったのです。

 したがって、それらを総合して考えますと、民事執行法の競売の効果が覆滅しないとの規定は、 旧競売法時代の仕組みを抜本的に改正することなく、いずれも若干の手続改正の寄せ木細工の下に、 覆滅否定をしているわけですから、単なる注意的な解釈規定ではなく、実体法の権利に踏み込んだ創 設規定と理解することが可能かも知れません。

 私は、この覆滅否定の規定は、債務者等が競売手続内で容易に担保権の不存在等を主張できるのに しなかったことによる失権的な効果であると考え、なるべく広く執行手続内の不服申立てを認める必 要があると考え、不服申立ての機会を広く説明してきました。

 ところで、担保権の不存在等を手続内で主張することを広く認めるとしても、その判断が容易でな い場合が少なくないことを考慮しますと、判断が微妙なものは、迅速性を旨とする民事執行の手続内 で処理するのは相当でなく、その判断を手続外の担保権不存在確認訴訟に委ねざるを得ない場合があ ります。特に、競売開始から売却まである程度の期間がかかることが想定される不動産競売において は、不服申立ての時間的な余裕もありますので、執行抗告での主張を認めなくても、債務者等は、担 保権の不存在確認訴訟の提起、それに伴う執行停止決定を得る機会も図られています。反面、売却許 可決定に対する執行抗告についても執行停止の効果は認められていませんが、売却許可決定が確定し ない限り、事後の代金納付等の手続に入ることができなくなりますので、執行抗告を認めると手続が 停止した状態になります。そのようなことを強調しますと、執行抗告において担保権の不存在等の主 張を認める必要はないということになります。他方では、担保権の不存在等について容易に判断でき るのに、一審の執行裁判所が判断誤りをしたことが明らかであると抗告裁判所が判断できる場合もあ り得るところです。そのような場合を強調しますと、執行抗告においても、担保権の不存在等の主張 を認めるという考えに繋がります。

 不動産競売において、担保権の不存在等の主張を執行異議でできることは明文の規定がありますが、 この他、売却許可決定に対する執行抗告でも主張できるかについては、民事執行法施行直後から、解釈 が分かれてしまいました。それは、今述べたような事情を考慮したものと思います。

 (二)不動産競売についての最高裁による判例の統一

  この解釈上の争いは、平成一三年四月一三日(民集五五・三・六七一)の最高裁の許可抗告につ いての裁判で、売却許可決定に対する執行抗告において担保権の不存在等の主張をすることは認めない との結論が示され、解釈上の争いが収束しました。
          」」」」」」」






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senpai 2013-10-25 13:20:12

担保権の消滅不存在を主張できるのは執行異議のみで、執行抗告はできなく、担保権の実行開始決定についても執行抗告はできないということなのですね。
ということはこの参考書が誤植なのですね・・・。
理解できました。ありがとうございました。

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syouhouiya  2013-10-25 21:43:37

平成15年改正により、民執182の文言があいまいになり、執行抗告ができると解釈するものもあります。
誤植とは限りません。


参考

「民事執行マニュアル」飯沼総合法律事務所 編
によれば、できないという見解が有力だ、と記載されています。

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senpai  2013-10-26 08:17:27

詳細情報感謝します。
ありがとうございます。

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syouhouiya  2013-10-26 08:59:40

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