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/民法過去問/53-1-⑤/時効援用の「当事者」と「代位」

AraiHiroki 2014-01-09 11:51:06

●OUTPUT民法Ⅰ-18-4
時効は、当事者が援用しなければ、これによって裁判をすることができない。

→○
時効は、当事者の援用を停止条件として確定的に効果が生じ、当事者がこれを援用しなければ、裁判所はこれによって裁判をすることができない。

●民法145条
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

●極テキスト民法ⅠP.188
④債権者代位によって、債務者の他の債権者に対する消滅時効を援用することができる(最判昭43.9.26)
 AはBに代位して、Cに対する消滅時効を援用できる。
 cf. Aは直接には、援用権を有していない。

●極テキスト民法ⅠP.192
⑭一般債権者
 →債務者に対する他の債権者の債権の消滅時効を援用できない。
 cf. 債権者代位によって、援用することができる。


●疑問
1. 過去問に対して、
  「時効は、当事者以外の人間が援用する場合にも、これによって裁判をすることができる」
  というような例を挙げることができるならば、本問は×となるように思われます。

2. ところが本問は○です。

3. 従って、「当事者」=「時効を援用できる者」という認識でよろしいでしょうか?──疑問の1

4. 3.が正しい場合、債権者代位によってBの時効を援用するCもまた、時効を援用する「当事者」である、という認識でよろしいでしょうか?──疑問の2

5. 3.および4.が正しい場合、テキストP.192により、
  「債務者に対する他の債権者の債権の消滅時効を援用できないが、債権者代位によって、援用することができる者」がいることになるかと思われます。

6. 「当事者」を「直接または間接に時効を援用できる者」と捉えればいいのでしょうか?──疑問の3


以上です。
よろしくお願いします。

 

当事者をそんな短い言葉で説明するのは困難です。


以下、ある弁護士の見解
「「「
時効援用権の当事者に関する最高裁の理論は、時
効援用権に関する民法の規定(145条:時効は当
事者がこれを援用するに非ざれば…)の「当事者」
の解釈として、一貫して、「時効により直接権利を
取得しまたは義務を免れる者に限定される」として
おり(権利を取得というのは取得時効を念頭に置い
た表現です。)、この理論の上に立って、保証人、物
上保証人、第三取得者の時効援用権を認めてきまし
た。
他方、通説とも言える学説においては、「時効
によって直接権利を取得しまたは義務を免れる者、
およびその権利または義務に基づいて権利を取得し
または義務を免れる者も含まれる。」という説明が
有力です(我妻榮:新訂民法総則p446)。
ただし、この学説に言う、「時効によって直接権利を取
得しまたは義務を免れる者」というのは、消滅時効
であれば債務の消滅という効果を得られる主債務者
本人に限られるという前提における説明であり、保
証人等は主債務の消滅に基づいて保証債務の消滅と
いう効果が得られる者として、学説後段に言う「お
よびその権利または義務に基づいて権利を取得しま
たは義務を免れる者」と考えており、保証人等につ
いては判例の認める結論と同様になると考えられて
います
確かに、判例の言う「直接権利を取得しまたは義務を免れる
者」という定義で保証人等が含まれるとすると、こ
こでの「直接」の意味はさらに多義的にならざるを
得まませんので、学説の説くように、「直接…」は、
消滅時効では主債務者本人のみを指すと定義した上
で、保証人等は「およびその権利または義務に基づ
いて…」と考えた方がより明確な思考ができるよう
に思います。
戻って後順位抵当権者の援用権ですが、最高裁は、
先順位の抵当権が時効で消滅することにより、後順
位抵当権者は順位が繰り上がってより多くの配当を
受けることができるが、それは、先順位抵当権の時
効消滅の反射的な利益に過ぎず、「時効消滅により
直接利益を受ける者」にはあたらないとして、上記
の結論に達しています。
これに対して学説として紹介した我妻博士は、後
順位抵当権者の援用権を認める見解のようです(我
妻榮:新訂民法総則p446、新訂担保物件法p4
22)。
上記の「およびその権利または義務に基づ
いて…」に後順位抵当権者も含まれると考えるので
しょう。
但し、私見ですが、後順位抵当権者の受け
る利益は、あくまで反射的な利益に過ぎず、法的な
利益とは言えないと考えれば、我妻博士の定義に立
っても、後順位抵当権者に援用権はないとして判例
と同様の結論にたどり着くことは可能なようには思
います。
」」」」
引用終了

参考になった:6

senpai 2014-01-10 15:33:46

senpai様

ご回答および引用、ありがとうございます。


「時効は、当事者が援用しなければ、これによって裁判をすることができない」

とする本肢は、

①時効の裁判は、援用を要する。
②援用の主体は、当事者である。

という二つの内容を一文で表現していると思うのですが、「当事者をそんな短い言葉で説明するのは困難」だということであれば、②についての正誤が判断しかねるのではないでしょうか。


とは言え、本肢の趣旨は条文をほとんどそのまま載せてあるものですから、純然たる知識問題として処理すべきなのでしょうね。
まだ学習初期ゆえにそれほど条文を読んでおらず、自身の勉強不足が招いた「的外れ」な疑問だったと反省しています。


ご回答ありがとうございました。

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AraiHiroki  2014-01-12 22:36:21

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