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/民法/法定地上権/土地・建物双方が共有の場合

handle 2014-06-29 21:16:18

以下の事例で、「法定地上権の成立が他の土地共有者に影響を与える」と解説されています。

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『甲・乙・丙が共有する土地』と、『甲・他8名が共有する建物』がある。

甲の債務を担保するために、甲・乙・丙それぞれの持分に抵当権を設定した場合
→法定地上権は成立しない(最判平6.12.20)

※乙・丙が甲の妻子で、実質甲の単独所有に近いような場合であったが、
そのような事情は登記記録で第三者がうかがい知ることはできない
↓一方
法定地上権の成立は他の土地共有者のみならず、競売による買受人の利害にも大きな影響を与える
↓ゆえに
このような事情で法定地上権の成否を決することはできない

客観的かつ明確な事情によって他の共有者の同意が認められる場合
→成立する(同判例)
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仮に、法定地上権が成立する場合、他の土地共有者にはどういった影響があるのでしょうか?

抵当権が実行されれば、他の土地共有者は権利を失います。
権利を失った後に法定地上権が成立しても、彼らには何ら関係ないはずです。

それとも、抵当権実行前から彼らに影響があるということでしょうか?
(土地の価値が下がる など)

ご回答よろしくお願いします。

 

疑問を感じたら、テキストのような加工された二次情報ではなく、原文を見ましょう。



これを本件についてみるのに、原審の認定に係る前示事実関係によれば、本
件土地の共有者らは、共同して、本件土地の各持分について被上告人B1を債務者
とする抵当権を設定しているのであり、B1以外の本件土地の共有者らはB1の妻
子であるというのであるから、同人らは、法定地上権の発生をあらかじめ容認して
いたとも考えられる。しかしながら、土地共有者間の人的関係のような事情は、登
記簿の記載等によって客観的かつ明確に外部に公示されるものではなく、第三者に
はうかがい知ることのできないものであるから、法定地上権発生の有無が、他の土
地共有者らのみならず、右土地の競落人ら第三者の利害に影響するところが大きい

ことにかんがみれば、右のような事情の存否によって法定地上権の成否を決するこ
とは相当ではない。そうすると、本件の客観的事情としては、土地共有者らが共同
して本件土地の各持分について本件建物の九名の共有者のうちの一名である被上告
人B1を債務者とする抵当権を設定しているという事実に尽きるが、このような事
実のみから被上告人B1以外の本件土地の共有者らが法定地上権の発生をあらかじ
め容認していたとみることはできない。けだし、本件のように、九名の建物共有者
のうちの一名にすぎない土地共有者の債務を担保するために他の土地共有者らがこ
れと共同して土地の各持分に抵当権を設定したという場合、なるほど他の土地共有
者らは建物所有者らが当該土地を利用することを何らかの形で容認していたといえ
るとしても、その事実のみから右土地共有者らが法定地上権の発生を容認していた
とみるならば、右建物のために許容していた土地利用関係がにわかに地上権という
強力な権利に転化することになり、ひいては、右土地の売却価格を著しく低下させ
ることとなるのであって、そのような結果は、自己の持分の価値を十分に維持、活
用しようとする土地共有者らの通常の意思に沿わないとみるべきだからである。ま
た、右の結果は、第三者、すなわち土地共有者らの持分の有する価値について利害
関係を有する一般債権者や後順位抵当権者、あるいは土地の競落人等の期待や予測
に反し、ひいては執行手続の法的安定を損なうものであって、許されないといわな
ければならない。
四 そうすると、これと異なる原審の判断には、法定地上権の成立に関する法令の
解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかで
あるから、その趣旨をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、
前示事実関係に照らしても、本件において他に法定地上権の成立を肯定すべき事情
はない。また、被上告人らのその余の抗弁中、本件土地について本件建物のために
約定の地上権が設定されていたとの主張については、右地上権が登記されていたと

の主張がなく、したがって、それを本件土地の買受人である上告人に対抗する要件
を欠くから、失当というべきであり、また、上告人の請求が権利の濫用に当たると
の主張については、前示事実関係に照らし理由がないことが明らかである。そうす
ると、上告人の請求を認容した第一審判決は正当であって、被上告人らの控訴はい
ずれも棄却すべきである。

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senpai 2014-06-30 08:12:07

ご返信ありがとうございます。

こういうことなのですね。

「法定地上権が成立するとなると、抵当権設定時から土地の持分の価値が著しく低下することになる。
これは他の土地共有者の意思に沿わないとみるべきである。
また、乙を含めた土地共有者らの持分についての利害関係人(一般債権者、競落人など)にとっても、
期待や予測に反する。」

今後は、判例でわからないことがあれば、判決文も参照します。

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handle  2014-06-30 11:25:06

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