aketomo 2014-07-23 02:24:54
抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度についてなのですが、
賃借権の登記がされる前に存在していた登記を有するすべての抵当権者の同意が必要で、また、借地上の対抗要件を具備した後に出現し、当該賃借権の登記前に登記した抵当権者についても、同意が必要だと思います。
そこで質問なのですが、例えば、時系列的に①抵当権②借地上の対抗要件③抵当権④賃借権⑤抵当権の場合、①と③の同意を得なければならないのであって、⑤の同意は得なくていいんですよね?
また、借地借家法上の対抗要件を備えているだけではダメなのは、先に抵当権を設定している者がいる場合で、その物に対抗するためには賃借権の登記と同意の登記が必要なのであって、誰よりも先に借地借家法上の対抗要件が具備されていれば、その後の抵当権者にはもちろん対抗できますよね?
素人丸出しの質問ですがご教授お願いします。
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抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度において、同意を要する抵当権者の判断の仕方について説明します。
「登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意し•••」(民法387条)とあるように、登記の先後だけで考えます。
・賃借権の登記の前に登記をした先順位の抵当権者→同意が必要であり、登記義務者になる
・賃借権の登記の後に登記をした後順位の抵当権者→同意は不要で、登記義務者にもならない
これに当てはめると、①抵当権②借地上の対抗要件③抵当権④賃借権⑤抵当権の場合、④の賃借権よりも前に登記されていた①と③の同意は必要で、賃借権の後に登記された⑤の同意は不要です。
⑤の同意が不要なのは、賃借権が抵当権よりも先に登記されている以上、もともと賃借権が抵当権に優先しているので、この制度によって対抗力を与える必要はないからです。
③の同意が必要である理由について、詳しく述べます。
借地借家法上の対抗要件が抵当権の登記よりも先に備えられていれば、実体上は賃借権が抵当権に優先しています。
しかし、〈賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記〉を申請する場合、全ての先順位抵当権者の同意を得て、全ての先順位抵当権者が登記義務者となる必要があります。
ここでの先順位抵当権者とは、実体上の問題ではなく、賃借権の登記よりも先に登記がされた抵当権者のことを意味します。
登記官は、抵当権の登記と賃借権の登記の先後関係だけで形式的に判断するからです。
⑤の同意が不要であることと比較すると、
③の場合→実体上は賃借権が抵当権に優先しているが、登記記録上は劣後している→だから③の抵当権者の同意は必要
⑤の場合→実体上も登記記録上も賃借権が抵当権に優先している→だから⑤の抵当権者の同意は不要
ということです。
③の場合、登記記録上は賃借権が抵当権に劣後しているので、登記官は③の抵当権者の同意が必要と考えるのです。
また、抵当権設定よりも前に、賃借権について借地借家法上の対抗要件が具備されていたとしても、その後に抵当権の登記が賃借権の登記よりも先になされた場合には、その抵当権者の同意も必要です。
つまり、
(1)抵当権設定→賃借権設定→賃借権の借地借家法上の対抗要件→抵当権の登記→賃借権の登記
の場合にも、
(2)賃借権設定→賃借権の借地借家法上の対抗要件→抵当権設定→抵当権の登記→賃借権の登記
の場合にも、その抵当権者の同意が必要です。
ですから、(2)の場合にも、同意の登記をしなければその抵当権者に賃借権を対抗することはできません。
いつ設定されたか、借地借家法上の対抗要件をいつ備えたか、を考慮する必要はないです。
同意を要する抵当権者を判断するときには、実体上のことは無視して、賃借権の登記よりも先に登記された先順位抵当権者全員の同意が必要と考えておけば間違いありません。
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g7tih 2014-07-23 10:19:54
g7tihさん 回答ありがとうございます。
詳しい説明ありがとうございます。概ね理解できました。
ただ、「(2)賃借権設定→賃借権の借地借家法上の対抗要件→抵当権設定→抵当権の登記→賃借権の登記 の場合にも、その抵当権者の同意が必要です。」についてなのですが、そもそもこの場合だったら、賃借権の登記をする必要がないように思えるし、また、同意なくても抵当権者に対抗できるのではないのでしょうか?
自分はてっきり借地借家法上の対抗要件よりも先に抵当権が登記されている場合は、その者に対抗するためには賃借権の登記+同意の登記が必要で、その際、他にも抵当権者がいる場合は、借地借家法上の対抗要件よりも後であっても、賃借権の登記よりも先に登記している抵当権者には同意が必要なのであって、そもそも借地借家法上の対抗要件が誰よりも先に入っているのなら、その後の誰に対しても当然に対抗できるのではないのでしょうか?
(2)の場合だと、借地借家法上の対抗要件の存在意義がないように思えるのですが…。
再度の質問で恐縮ですが、よろしくお願いします。
aketomo 2014-07-24 19:22:55
その通りですね。すみません。
〈賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記〉をすることを前提に考えてしまっていました。
確かに、「誰よりも先に」(全ての抵当権の登記に先立って)賃借権の借地借家法上の対抗要件が具備されていれば、賃借権の登記も同意の登記もする必要はなく、そのままで全ての抵当権に対抗できます。
賃借権に優先する抵当権があり、同意の登記をすることになったときに「他にも抵当権者がいる場合は、借地借家法上の対抗要件よりも後であっても、賃借権の登記よりも先に登記している抵当権者」の同意も必要というところも、ご指摘の通りです。
以下に、(2)でも抵当権者の同意が必要と書いたときに想定していた場面について解説します。
(2)が次のような場面だったと考えてください。(1番抵当権を付け加えました。)
1番抵当権設定→1番抵当権の登記→賃借権設定→賃借権の借地借家法上の対抗要件→2番抵当権設定→2番抵当権の登記→賃借権の登記
のように、賃借権に優先する1番抵当権と賃借権に劣後する2番抵当権があります。
この場合に、賃借権を1番抵当権にも対抗できるようにするために同意の登記をするとします。
その際、1番抵当権者の同意だけでなく2番抵当権者の同意も得る必要があります。
同意の登記をする以上は、賃借権の登記よりも先に登記をした抵当権者全員の同意が必要であり、そこには2番抵当権者も含まれるからです。
(2)であっても抵当権者の同意が必要というのは、このように他の抵当権があり、同意の登記をすることを前提に考えた場合です。
同意の登記をすることを前提としないのであれば、(2)だけでなく、(1)でも同意は不要です。
つまり、
(1)抵当権設定→賃借権設定→賃借権の借地借家法上の対抗要件→抵当権の登記→賃借権の登記
という順であり、他の抵当権で賃借権に優先するものがないなら賃借権の登記も同意の登記もする必要はなく、賃借権はこの抵当権に対抗できます。
賃借権の方が抵当権よりも先に対抗要件を具備しているからです。
しかし、この場合であっても他の抵当権で賃借権に優先するものがあり、同意の登記をするという場面を考えれば、この抵当権者の同意も得る必要がある、という考え方は上記の(2)と同じです。
(1)、(2)でそれぞれ同意を要する場面について説明しましたが、この場合には実体上は賃借権の方が抵当権よりも優先していても、その抵当権者の同意も得なければならないということです。
具体的に言うと、(2)の2番抵当権のように、賃借権の借地借家法上の対抗要件が抵当権の登記より先に具備されていても、賃借権の登記が抵当権の登記に劣後している場合です。
同意の登記をする場面を前提とした場合には、同意を要する抵当権者を判断する基準として、抵当権と賃借権の設定の前後や賃借権の借地借家法上の対抗要件などの、同意の登記が入る登記記録からわからない事情を考慮する必要はなく、賃借権の登記よりも先に登記された先順位抵当権者全員の同意が必要です。
複雑になってしまいましたが、ご理解いただけたでしょうか。
ご指摘ありがとうございました。
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g7tih 2014-07-24 22:41:40
g7tihさん 回答ありがとうございます。
またまた詳しい説明ありがとうございます。理解できました。
なお、「(1)抵当権設定→賃借権設定→賃借権の借地借家法上の対抗要件→抵当権の登記→賃借権の登記という順であり、他の抵当権で賃借権に優先するものがないなら賃借権の登記も同意の登記もする必要はなく、賃借権はこの抵当権に対抗できます。 賃借権の方が抵当権よりも先に対抗要件を具備しているからです。」
についてなのですが、この場合、つまり最後の賃借権の登記は必要ないってことですよね?
aketomo 2014-07-24 23:55:43
そうですね。それは間違いでした。
(1)抵当権設定→賃借権設定→賃借権の借地借家法上の対抗要件→抵当権の登記
という順であり、他の抵当権で賃借権に優先するものがないなら賃借権の登記も同意の登記もする必要はなく、賃借権はこの抵当権に対抗できます。
賃借権の方が抵当権よりも先に対抗要件を具備しているからです。
が正しいです。ありがとうございます。
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g7tih 2014-07-25 07:40:36
結論から言えば、同意の登記をする必要があります。
確かに地上建物の登記名義によりその名義者が地上に建物を所有することができる借地権を有すると推知することができるため、借地権の登記がなくても、これをもって第三者に対抗することができます。しかし、その地上建物の登記されている範囲でしか対抗できません。
一方、賃借権の登記の登記事項を見れば一目瞭然ですが、その地上建物の登記よりもきめの細かいところまで当事者間で定めて登記をしておけば、第三者に対抗することができます。
ですから、不測の事態に備えて、当事者間の賃貸借契約の内容に沿った賃借権を先順位抵当権者に優先させようとするにはやはり同意の登記が必要となります。
同意の登記の申請の場面においては、その不動産の乙区の登記で判断されるので(形式上)賃借権のの登記の前の抵当権等の登記の名義人すべての同意が必要です。ただし、借地上の対抗要件を先に具備してあるのならば、その後の抵当権者は承諾義務が生ずるかと思われます。
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bolza 2014-07-25 21:29:43
bolzaさん 回答ありがとうございます。
なるほど~。細部まで定めた賃借権を対抗するためには賃借権の登記が必要ということですね。ただ、借地上の対抗要件を先に具備してあるのならば、その後の抵当権者は承諾義務が生ずるとのことなので同意の登記は問題なさそうですが、ネックなのは賃貸人に登記してもらえるかですね。
勉強になりました。ありがとうございました。
aketomo 2014-07-25 22:40:37