tanchann 2014-07-27 00:35:09
小泉先生のわかりやすい講義、感謝しています。
インプット9-2で
判例によると基本は行為請求権に基づくが、不可抗力は認容請求権の立場とご説明頂きましたが、
インプット9-3の講義で
台風で木が倒れた時の説明は、行為請求権のご説明と解しています。
試験対策上、台風(不可抗力)で木が隣地に倒れた物権的請求はどちらと認識すべきでしょうか。
よろしくお願いします。
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民法9-4の講義で、小泉先生は
「不可抗力であっても物権的請求権は行使できる。
台風で木が倒れた場合でも、請求できる。
侵害者の故意・過失は問わない。」
と説明されています。
2行目の「請求できる」は、費用負担について行為請求権説をとるという意味ではなく、物権的請求権を行使できるということを意味します。
台風で木が倒れたときに行使できる物権的請求権とは、倒れた木の所有者からは返還請求権(木を返せ)、木が倒れている土地の所有者からは妨害排除請求権(木をどかせ)です。
物権的請求権にはこの他に妨害予防請求権(木が倒れて来ないようにしろ)もありますが、これら3つの物権的請求権は台風などの不可抗力であっても、侵害者の故意・過失がなくても、請求することができます。
それに対して、物権的請求権と費用負担の問題は、不可抗力であっても物権的請求権が行使できるかどうかという問題ではありません。
「不可抗力であっても物権的請求権が行使できる」ということを前提として、その際に物権的請求権を行使した者・行使された者のどちらが費用を負担するかということです。
物権的請求権の中の、費用負担の問題になって初めて行為請求権説・忍容請求権説(認容請求権説)・修正行為請求権説という説の対立があります。
判例は、基本的に行為請求権説をとっているので、物権的請求権を行使した者が相手方の行為を請求できる、つまり費用は相手方(行使された者)負担です。
しかし、不可抗力の場合だけは忍容請求にとどまるので、台風などが原因の場合は物権的請求権を行使した者が費用を負担します。
これが、物権的請求権と費用負担の問題に対する判例の立場ですが、過去問では「判例の考え方はどれか」「行為請求権説とはどんなものか」というように知識を問うものは出ていません。
具体的な事例の中で、それぞれの説に立って考えると結論はどうなるかという問題や、ある説に対する批判はどれかという推論型の問題が過去に出題されています。
民法では、判例の考え方が試験の答えになるという問題がほとんどですが、この物権的請求権と費用負担の問題は、その例外だということです。
不可抗力で木が倒れた場合にどちらが費用を負担するかということの結論は、説によって異なります。
ですから、判例の考え方がどんなものかを覚えるよりも、過去問(平成3年午前の部第7問)を解いてそれぞれの説の考え方を具体的事例に当てはめる練習をしたり、それぞれの説に対する批判にはどんなものがあるかを覚える方がよいです。
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g7tih 2014-07-27 08:44:45
まず、近年の台風を不可抗力ととらえられるか、という問題点。
想定事例
普通の台風が発生し、甲の樹木が、隣の乙地に倒れてきた。
甲「植木屋を頼んどいたから、費用はそちらで払ってくれ。民法に決められているとか言ってたから」
乙「冗談じゃない。甲の木しか倒れていないのだから、そちらの不法行為だ。きちんと管理していないのだから、工作物責任とか、親せきの司法書士受験生に聞いた。うちの花壇を弁償してくれ」
このような場合、近年の裁判所はどう解決しているのか。
<相隣地の関係にあり、将来の土地崩壊を予防することは、両地にとって等しく利益となり、その必要も両地にとって等しく存する。しかもその予防工事には莫大な費用を要することは明らかであるから・・・原告が設置を求める擁壁は界標、囲障、しょう壁等境界線上の工作物に近い性質をあわせ有する(東京高判昭和51年4月28判時820号67頁)>」
[A所有地は所有者自身によって約2メートル地上げされ、結局B所有地より4、1メートル高くなり、これに伴い大谷石3段づみが附加設置され、約3メートルの高さの擁壁でもってB所有地に臨むことになった。このケースで裁判所は、擁壁の素材は大谷石であり・・・その風化が著しく・・・早晩その改修を余儀なくされる。Bは所有権に基づく妨害予防請求権に基づき新擁壁に改修することを求めうる。しかし、予防工事については相隣関係調整の見地から高さ1メートルはBに利益があるから、危険除去の費用の三分の一をBが負担すべきだとした(横浜地判昭和61年2月21日判時1202号97頁)」
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senpai 2014-07-28 14:41:14