aketomo 2014-07-29 13:04:41
インプットテキストには、「(根抵当権者の申立てにより)一旦、競売or担保不動産収益執行or物上代位の開始・差押があった場合は、その後、それらの効力が失われても確定の効果は消滅しない」とありますが、滞納処分による差押の場合は含まれないのでしょうか?
また、話は変わりますが、根抵当権の被担保債権の範囲のところで出てくる「特定債権」、「不特定債権」の意味がわからないのですが、これは「不特定債権=債権額が増減変動する」、「特定債権=債権額が増減変動しない」ということでしょうか??
ご教授お願いします。
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結論として、滞納処分による差押も含まれます。
滞納処分による差押の効力が失われるのは、滞納処分による差押が解除された場合です。
国税徴収法基本通達に、滞納処分による差押の解除と根抵当権の元本確定の効果との関係について次のように書かれています。(試験に全く関係のない部分は省略しています。)
「滞納処分による差押えが解除された場合には、根抵当権の担保すべき元本は確定しなかったものとみなされる(民法第398条の20第2項本文)。・・・(省略)・・・
なお、次に掲げる場合には、差押えを解除しても、根抵当権の担保すべき元本の確定の効果は、消滅しないことに留意する。
(1) 根抵当権者が当該財産に対して滞納処分による差押えをしたとき(民法第398条の20第1項第2号)。
(2) 根抵当権の担保すべき元本が確定したものとしてその根抵当権又はその根抵当権を目的とする権利を取得した者がいるとき(民法第398条の20第2項ただし書)。」
つまり、滞納処分による差押の場合も、競売・担保不動産収益執行・物上代位による差押と同じように考えてよいということです。
上記の国税徴収法基本通達を整理すると、以下の通りです。
・原則(元本確定の効果が消滅する)
滞納処分による差押えが解除された場合には、根抵当権の担保すべき元本は確定しなかったものとみなされる(民法第398条の20第2項本文)
・例外(元本確定の効果が消滅しない)
例外①根抵当権者が当該財産に対して滞納処分による差押えをしたとき(民法第398条の20第1項第2号)
例外②根抵当権の担保すべき元本が確定したものとしてその根抵当権又はその根抵当権を目的とする権利を取得した者がいるとき(民法第398条の20第2項ただし書)
元本確定事由となっている滞納処分による差押は、根抵当権者自身がするもの(2号確定)・第三者がするもの(3号確定)の2つのパターンがあります。
今回問題となるのは、上の例外①です。
2号確定(根抵当権者がする滞納処分による差押)の場合に、解除によって滞納処分による差押の効力が消滅しても元本確定の効果は消滅しないということです。
したがって、滞納処分による差押の場合も、競売・担保不動産収益執行・物上代位による差押と同じで、根抵当権者自身がするものの場合にはそれ自体の効力が消滅しても元本確定の効果は消滅しません。
原則と例外②の部分は、根抵当権の3号確定について民法と同じことが書かれているだけです。
民法398条の20第2項本文→3号確定・4号確定の場合には、第三者の申立てによる競売手続の開始・滞納処分による差押(3号)や破産手続開始の決定(4号)の効力が消滅したときは元本確定の効果も消滅する。
民法398条の20第2項ただし書→ただし、元本が確定したものとして根抵当権またはこれを目的とする権利を取得した者がいるときは元本確定の効果は消滅しない。
この民法の規定を滞納処分による差押の部分だけに絞って書いたのが国税徴収法基本通達の原則(民法398条の20第2項本文に対応)と例外②(ただし書に対応)です。
以上のことから、滞納処分による差押の場合も、
それ自体の効力が消滅した場合
根抵当権者自身がするもの→元本確定の効果は消滅しない
第三者がするもの→元本確定の効果も消滅する
となる点では、競売・担保不動産収益執行・物上代位による差押と全く同じということがわかります。
長くなるので、特定債権と不特定債権については次に書きます。
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g7tih 2014-07-30 11:02:52
特定債権と不特定債権についてです。
抵当権と元本確定後の根抵当権は特定債権を担保するのに対し、元本確定前の根抵当権は不特定債権を担保します。
特定債権と不特定債権の違いは、債権額が変動するかということとは関係がありません。
また、特定債権とはすでに発生していて債権の内容が決まっているもの、不特定債権とは発生時期も債権の内容も決まっていないもの、と説明されることが多いですが、厳密には正しくありません。
抵当権の附従性の緩和によって、将来債権を担保することが認められているので、すでに発生している債権でなくても特定債権として抵当権で担保されることはあるからです。
また、根抵当権については、元本確定前は不特定債権を担保しますが、すでに発生していて債権の内容も決まっている債権であっても根抵当権の枠の中に入る債権であれば担保されるので、発生時期・債権の内容が決まっていないものが不特定債権というわけでもありません。
以上のことから、発生時期・債権の内容が決まっているかどうかによって特定債権と不特定債権の区別をすることはできないことがわかります。
特定債権については、債権の内容が決まっているというよりも、抵当権自体がどの債権を担保するかが決まっていると考えた方がよいです。
根抵当権は元本確定の前後によって異なります。
元本確定前は、どんな債権を担保するかが決まっていない不特定債権担保の根抵当権です。
いったん根抵当権の枠の中に入った債権であっても、債権譲渡などで債権が移転し担保されなくなったり弁済などで債権が消滅したりするので元本確定までは根抵当権が担保する債権が決まりません。
元本確定後は、根抵当権が担保する(根抵当権を実行したときに回収する)債権が決まり、特定債権担保の根抵当権になります。
元本確定事由が生じた時点で根抵当権の枠に入っている債権、というように担保される債権が特定します。
これも、元本確定によって債権の内容が決まるということではなく、根抵当権自体がどの債権を担保するかが決まるという意味です。
まとめると、
抵当権と元本確定後の根抵当権はどの債権を担保するか決まっている→特定債権担保
元本確定前の根抵当権はどの債権を担保するか決まっていない→不特定債権担保
というように、特定債権と不特定債権の違いは、債権の内容が決まっているかという視点ではなく、抵当権や根抵当権がどの債権を担保するかが決まっているかという視点で考えるとわかりやすいです。
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g7tih 2014-07-30 11:13:16
g7tihさん 回答ありがとうございます。
まず、(根抵当権者の申立てによる)滞納処分の差押の場合も含まれるとのことなので、そのように覚えておきます。
また、特定債権・不特定債権の意味については、
特定債権→(根)抵当権により「どの債権を担保するのかが決まっている」場合のその債権
不特定債権→根抵当権により「どの債権を担保するのかが決まっていない」場合のその債権
といった感じで理解しておこうと思います。
詳しい解説ありがとうございました。
aketomo 2014-08-02 23:41:15
再度の質問で恐縮なのですが、上記のように解釈するならば、根抵当権において元本確定前の債権はすべて不特定債権ということになると思いますが、であるならば、インプットテキストに記載されている「根抵当権は特定債権だけを被担保債権とすることはできないが、不特定債権と併せて担保することはできる」がいまいちしっくりこないのですが…。
インプットテキストの説明では元本確定前でも、不特定債権と特定債権を区別しているように思えるのですが…。
ご教授お願いします。
aketomo 2014-08-03 01:48:16
不動産登記からアプローチした方がよさそうです。
根抵当権設定段階の先例を参考にすると根抵当権が担保する債権は以下のように定められています。
① 債務者との特定の継続的取引契約によって生ずる債権
② 債務者との間の一定の種類の取引によって生ずる債権
③ 特定の原因に基づいて生ずる債権
④ 手形又は小切手上の請求権
⑤ ①から④までに属しない特定債権をも併せて担保すべき債権と定めた場合には、当該債権
このうち①から④までは不特定債権、⑤を特定債権と分類されると思います。
そして、これらの担保される債権の範囲をどのように記載されるかの具体例を示すと
①は、年月日電気製品供給契約 年月日フランチャイズ契約 年月日リース取引等契約
②は、売買取引 銀行取引 信用組合取引
③は、甲工場の排液による損害賠償債権 乙工場からの清酒移出による酒税債権
④は、手形債権 小切手債権
このように範囲が定められるのに対し
⑤は、年月日貸付金 年月日売買代金
と、当該債権を具体的に特定するに足りる事項を申請情報の内容とします。
厳密に不特定債権と特定債権の違いを書くと膨大な量になり、しかも正確に伝わるか自信がありません。なので、債権の範囲の記載の仕方によってイメージしていただくことで許してください。
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bolza 2014-08-05 21:06:58
bolzaさん 回答ありがとうございます。
なるほど。ということは例えば、根抵当権が担保する債権を設定する場合に、「売買取引から生ずる債権(不特定債権)」と「〇月〇日付の金銭債権(特定債権)」みたいに、基本は売買取引から生ずる債権を根抵当権が担保する債権とするけど、前に貸していたお金も踏み倒されるのは嫌だから、ついでに根抵当権で担保してしまおう、といった感じでしょうかね。
とりあえずは、このようなイメージを持っておこうと思います。
aketomo 2014-08-05 22:30:11