司法書士の勉強中に発生する疑問を解決する質問広場

/民法/債務不履行について

aketomo 2014-08-22 11:26:01

例えば、建物の売買契約における引渡債務が売主の過失により債務不履行になった場合の買主が行使できる権利(要件を満たしているとして)についてなのですが、
1.履行が可能なら引き続き履行するように求める+履行遅滞により何かしらの損害が発生したのであればその損害賠償
2.履行が可能であっても契約を解除+履行遅滞により何かしらの損害が発生したのであればその損害賠償
3.履行が不能ならその履行不能時の時価による損害賠償+履行不能により何かしらの損害が発生したのであればその損害賠償
4.履行が不能なので契約の解除+履行不能により何かしらの損害が発生したのであればその損害賠償

これで合ってますでしょうか?

ご教授お願いします。

 

前半2パターン(履行遅滞の場合)

債権自体は依然として維持されているので当然任意の履行の請求をすることができるし、それでも債務者が履行しない場合は強制履行の請求をすることもでき、さらに、任意に履行の請求をしている場合のもちろん強制履行の請求ができるからといって損害賠償請求が認められないわけではありません。(414条)
また、541条の要件を満たしていれば契約の解除をすることができ、この場合においても解除権を行使したからといって損害賠償請求が認められないということにはなりません。
次に履行遅滞に基づく損害賠償請求ですがその内容は以下の2つになります。
① 遅延賠償(遅延によって生じた損害の賠償)
② 填補賠償(履行に代わる損害賠償)

このうち②については、契約を解除しない限り②を求めることができないのが原則ですが、履行遅滞後に相当の期間を定めて催告をし、それでも履行されない場合には、解除の意思表示がなくても填補賠償の請求をすることができます。(昭和8・6・13)


後半2パターン(遅行不能の場合)

履行の請求の場面はありません。(当然)
また、543条の要件に該当していれば契約を解除することができ、損害賠償請求を解除によって妨げられることはありません。
次に履行不能に基づく損害賠償請求ですがその内容は結局上記②になってしまします。
ただし、履行不能の場合には請求権の競合が生じやすく少し複雑になります。
例えば、動産を借りていた借主が自己の過失によりその動産を滅失してしまった場合、その動産の所有者である貸主に対する返還義務の履行不能となり、貸主は債務不履行に基づく損害賠償請求権を有します。それに加えて、借主は所有者である貸主の所有権を不法に侵害したので、貸主は不法行為に基づく損害賠償請求権をも有することになります。この両方を請求することができませんが、どちらか債権者が有利な方を選択して請求するということになると思われます。(立証責任、時効等を考えて)
あと、条文上の規定はないのですが公平の原則から代償請求権というものも認められています。
例えば
売主A 買主B 第三者C として、AがBに目的物を引き渡す前にCが当該目的物を壊し引渡しが不能となってしまった場合、BはAに帰責性がなければ債務不履行に基づく損害賠償請求をすることはできません。一方、AはCに対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有しこれによりAが利益を得たのであればその不法行為に基づく損害賠償請求権をBに移転するよう請求でき、これを代償請求権といいます。


不完全履行の場合

後から給付を完全なものとすることができる場合  履行遅滞と同様に処理
後から給付を完全なものとすることができない場合 履行不能と同様に処理


あとは何をもって損害とするかの問題でこれは416条とその周辺にある判例をもってある程度判断できると思います。

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bolza 2014-08-22 21:15:24

bolzaさん 回答ありがとうございます。

詳しい説明のおかげで理解することができました。

ありがとうございました。

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aketomo  2014-08-25 22:50:52

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