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/民法/賃借人の保証人について

aketomo 2014-08-19 12:01:47

賃借人の保証人は、賃料の不払いによって賃貸借契約が解除された場合、賃借人が目的物を返還しない間に賃貸人に与えた損害も補償する責任がある(大判昭13.1.31)

どなたか上記判例の解説お願いします。よろしくお願いします。

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これに関しては、下級審判例で保証人の責任を制限しています。


建物の賃借人が賃料を支払わなかったために、賃貸人は賃貸借契約を解約したのち建物明渡を求めて裁判を起こしました。その結果、賃借人が建物を明渡すという内容の和解が成立しましたが、賃借人は和解で決めた明渡期限も守らず居座りました。この時点で、賃貸人は、直ちに建物明渡の強制執行をすることができました。しかし、建物の立地条件が悪いために新たな借り手が見つかりにくかったため、賃貸人は、このまま賃借人に建物の使用を続けさせたうえで賃借人または保証人から賃料相当の損害金を受け取ったほうが得策だと考え、明渡しの強制執行をしないで、明渡しまでの損害金の支払を求める裁判を起こしました。

これに対して、裁判所は、明渡執行ができるのにそれをしないで明渡しまでの損害金を請求するのは、みずからの権利不行使により増大した損害を保証人に負担させようとするものであるから信義誠実の原則に著しく反するものであり許されないと判断しました(東京地方裁判所昭和51年7月16日判決)。

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senpai 2014-08-19 13:19:26

aketomo様

大判昭13.1.31の判決の説示としては、判決文を読んではいないので確定的なことを言うことはできないということを前提にしてください。
まず、保証契約の法的性質のひとつに附従性が存するのであり、主たる債務の存在を前提として保証債務が存することから、賃貸借契約の保証人は当該賃貸借契約の解除により、その保証債務も消滅すると解することはできるのであるところ、主たる債務の保証の範囲につき利息・違約金・損害賠償も包含する(民法第447条)から賃借人が賃貸人に与えた賃借物にかかわる損害の賠償も保証債務の射程とすることとできるのである。
しかしながら、前述したとおり賃貸借契約が解除された以上は保証人はその保証債務も消滅することになるのだが、当該判決は賃貸借契約の解除は将来にのみ有効となるのであって、賃借人の返還義務は当該賃貸借契約に基づくのであり、賃借人がその返還の義務の履行を果たしていないということは債務不履行にあたり、法第447条を適用して、債務不履行により生じた損害賠償債務を保証債務とすることができると判示しているのではないでしょうか。

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kochan 2014-08-19 15:54:45

やはり、保証人は「常識的範囲」しか責任がありません。


【広島地裁福山支部平成20年2月21日判決】は,公営住宅の賃貸借(月額賃料は3万円程度)の事案ですが,10年分の滞納賃料(及び賃料相当損害金)の支払いを連帯保証人に対し請求した事案で,「公営住宅の賃貸借契約に基づく賃料等の滞納があった場合の明渡等請求訴訟の提起に関して,その行政実務において,滞納額とこれについての賃借人の対応の誠実さなどを考慮して慎重に処理すること自体は相当且つ適切な処置であるとしても,そのことによって滞納賃料等の額が拡大した場合に,その損害の負担を安易に連帯保証人に転嫁することは許されず,明渡等請求訴訟の提起を猶予する等の処置をするに際しては,連帯保証人からの要望があった場合等の特段の事情のない限り,滞納額の増加の状況を連帯保証人に適宜通知して連帯保証人の負担が増えることの了解を求めるなど,連帯保証人に対しても相応の措置を講ずべきものである」とした上,次のように認定しています。
「賃借人である訴外Aが,平成6年夏頃から,納付誓約書に記載された約束どおりの納付を滞るようになり,その後,新たな滞納分も加わって,平成11年8月25日現在の滞納額は53万7700円,平成12年8月14日現在の滞納額は59万4100円,平成13年9月3日現在の滞納額は99万0800円,平成14年8月7日現在の滞納額は129万3000円,平成15年8月20日現在の滞納額は172万3400円,平成16年12月20日現在の滞納額は226万7000円,平成17年11月17日現在の滞納額は265万3400円と増加した」にも拘わらず,訴外A(借主)に対しては,再三にわたって催告書を送付し,訪問等により本人と接触し納付指導を行うなどしていたものの,被告(連帯保証人)に対しては,「平成5年12月20日に催告書を送付したのを最後に,平成18年10月11日に至るまで,催告書を全く送付することなく,また,訴外Aの賃料滞納の状況についても一切知らせずに放置していたものであり,原告には内部的な事務引継上の過失又は怠慢が存在するにもかかわらず,その責任を棚上げにする一方,民法上,連帯保証における責任範囲に限定のないことや,連帯債務における請求に絶対効が認められることなどから,被告に対する請求権が形骸的に存続していることを奇貨として,敢えて本件訴訟提起に及んでいるものであり,本件請求における請求額に対する被告の連帯保証人としての責任範囲等を検討するまでもなく,本件請求は権利の濫用として許されないものというべきである」

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senpai 2014-08-19 17:02:59

保証人が予想しないような責任は負いません。

東京地裁昭和51年7月16日判決】では,「賃貸借契約において賃借人に金額及び期間の定めのない保証人が付されている場合,賃借人が著しく賃料債務の履行を怠り,かつ保証の当時予見できなかった資産状態の悪化があって将来保証人の責任が著しく増大することが予想されるときは,保証人は将来に向かって当該保証契約を解除することができる」とされ,【東京地裁平成10年12月28日判決】でも,「賃貸借契約について連帯保証した者は,当事者間の信頼関係が著しく破壊される等の特段の事情があれば連帯保証契約を一方的に解除しうる」とされています(私見ですが,ここでいう「当事者間の信頼関係」とは,直接的には保証契約当事者間(貸主・連帯保証人間)を指すと解されますが,借主と連帯保証人との関係も「特段の事情」の一要素として加味されると思われます)。
すなわち,一旦,借主の連帯保証人になったら,賃貸借契約が更新(法定更新・合意更新)される限りずっと責任を負わなければならないのかというと必ずしもそうではなく,「特段の事情」があれば,保証人は連帯保証契約を将来に向かって解除することができると解されています(これを実務上「解約告知権」と呼ぶこともあります)。
<5> そして,仮にこのような連帯保証契約の「解除」(解約告知権の行使)が認められない場合であっても,「賃貸借契約更新後に本件連帯保証契約に基づく責任を負わない特段の事情」があれば,連帯保証人は更新後に生じた債務については一定の範囲で責任を免れる余地があります。

前掲【東京地裁平成10年12月28日判決】でも,連帯保証人による連帯保証契約の「解除」(解約告知権の行使)は認めませんでしたが,主に以下の事情を考慮して,連帯保証人において「本件更新後は本件連帯保証責任を負わないと信じたのも無理からぬことであった」とした上,借主が本件更新後に負担した賃料等の債務については「連帯保証責任を負わない特段の事情があったものと解するのが相当である」と判示しました。
(1)本件賃貸借契約には賃料の支払を2か月怠ったときには,貸主は賃貸借契約を無催告解除しうる旨の特約も付されていたこと。

(2)更新前に,連帯保証人から保証契約解除の申し入れがあったこと。

(3)更新時には,借主の延滞額は200万円(6か月分以上)にも及んだが本件賃貸借契約は解除されず,貸主自身ですら賃貸借契約の更新に消極的であったにも拘わらずそのまま法定更新されたこと。

(4)借主は一旦延滞賃料を支払ったものの,更新直後から賃料の延滞が再開し,最終的に延滞賃料が400万円(1年分以上)を超えるまでになったこと。

(5)このような事態が,本件連帯保証契約が締結された当時,契約当事者間において予想されていたものであったとはいい難いこと。

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senpai 2014-08-21 17:10:45

senpaiさん kochanさん 回答ありがとうございます。

複雑でややこしいですね(*_*)

ただ、回答のおかげで自分なりにですが理解が深まりました。

ありがとうございました。

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aketomo  2014-08-22 11:25:49

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