shimizn 2015-01-24 18:48:55
下記のふたつの判例の考え方の違いについて教えて下さい。
①動産をA→B→Cと売買し、Bが転売代金債権をDへ譲渡して第三者対抗要件を備えた。その後、Aは動産売買の先取特権に基づいて当該債権を差し押さえても物上代位できない
②動産をA→B→Cと売買し、Bの一般債権者DがBC間の債権を差押えまたは仮差押えした後でも、Aは動産売買の先取特権に基づいて物上代位できる
①の考え方は、動産先取特権では「取引安全の保護」が優先するため、Aは物上代位できない、だったと思います。②についても「取引安全の保護」が優先するなら、物上代位できないような気がするんですが。
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これらの判例の考え方は,あまり違わないと思います。
まず条文から
「民法304条1項
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物 に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。」
先に出された②の判例(昭和60年7月19日)の理由において
民法304条1項ただし書の趣旨は,
第三債務者,「債権譲受人」又は転付債権者
が不測の損害を被ることを防止しようとすること
にあると言われています。
その上で,これらの者と異なり,差押え又は仮差押えしただけの一般債権者は保護されない,としました。
言い換えると,一般債権者による差押等があった段階は,いまだ「払渡し又は引渡しの前」ということでしょう。
①の判例( 平成17年2月22日)では,
民法304条1項ただし書の趣旨から,債権譲受人は保護される,
という結論になっており,
この点で上記②の判例と整合的です。
もっとも,②と①の間に出された,
抵当権に基づく物上代位VS債権譲渡の事案で,抵当権者を譲受人に勝たせた判例
(平成10年1月30日,債権譲渡は「払渡し又は引渡し」に含まれないとしたもの)
とは一見不整合だからか,
①の判例の理由では,
動産売買の先取特権には,抵当権とは異なり公示方法が存在しない,
という点も言及されています。
ちなみに,抵当権者の物上代位についての判例は,設定登記が先立つ場合,
A一般債権者による差押えに対しては,抵当権者の勝ち(平成10年3月26日,ただし,設定登記が差押えに後れる事案で抵当権者負け)
B債権譲渡 抵当権者の勝ち(前掲平成10年判例),
C転付命令 転付債権者の勝ち(平成14年3月12日)
になっています。
Cの場合に相当する場合の動産売買先取特権について,まだ判例はないはずですが,
Cの判例の趣旨や②の判例の傍論部分から言って,転付債権者の勝ちでしょう。
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Kilroy2014 2015-01-25 03:06:42
動産売買先取特権事案としては、昭和59年最判と昭和60年最判の傍論で、対抗要件を具備した債権譲渡が物上代位に優先するという扱いがされており、平成17年最判もその延長上に位置づけることができ
るので、予想された判決であると評されている。
平成17年最判に対しては、もともと、公示のない担保権である動産売買先取特権において、物上代位に基づく差押えに公示機能や対抗要件機能を担わせること自体に無理があるのではないか、民法304条1項但書による差押えの趣旨について、抵当権事案である平成10年最判では、差押えを物上代位権の権利行使要件と理解している(対抗要件は抵当権設定登記となる)のに対して、動産売買先取特権事案では差押えが対抗要件の機能も担うことになり、事案によって民法304条1項但書の差押えについての解釈が異なるのではないか、などの各種の問題点が存在する。平成17年最判と平成10年最判とでは、債権譲受人との関係で、動産売買先取特権の要保護性が抵当権のそれよりも低く評価されていないか、そもそも、抵当権事案では第三債務者保護説で、また、動産売買先取特権事案では優先権保全説
で、というような処理方法でよいのかという疑問も呈されている。
このように、判決は、事案ごとに適切な「結論」を導き出すために、学説を使い分けている。
首尾一貫していない。
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senpai 2015-01-26 17:42:45