司法書士の勉強中に発生する疑問を解決する質問広場

/どうやって覚えるか?①/小泉嘉孝

koizumi 2015-07-21 16:48:55

「過去問そのままであれば正解できるけれど、少し形を変えられると間違ってしまうんです。」

そこに、いつもと少し違う提案を。

ただ、これも「新しい方法」ではありません。受験生なら誰だってやってます。

しかし、「それをやる意味」を納得しているかどうかで、きっと「やる気」もその「効果」も変わってくると、私は考えています。


 

前回までのお話は。

記憶の分類として「エピソード記憶」と「意味記憶」というのがある。
そして、エピソード記憶は、自分で引き出せるけれども、意味記憶は、何か「きっかけ」がないと引き出せない、つまり外からスイッチを入れてやらなきゃならない。
それには、「過去問」というOUTPUT教材を使用するのが最も確実で手っ取り早いということでした。

受講生の方から、よく受ける相談の一つがこれです。
「過去問そのままであれば正解できるけれど、少し形を変えられると間違ってしまうんです。」

うん、うん。
みんな、そうです。私もそうでした。

と思いつつも、私は100年前からその答えは決まってるよ、とばかりにこう答えます。

「本当に理解して、覚えていないからです。」

そして、受講生も、その答えは私に聴く前からおよそ分かっているわけで、
「やっぱり、そうですよね・・・・」
まぁ、その確認をかれこれ20年ぐらいやっているわけです(笑)

そこで、今日は少し違った角度からの提案を。

確かに「論点をよく理解していない」というのは、全くそのとおりなんですが、ただこれは既にスイッチが入った後、いかにしてスムーズに記憶の引出しを開けるかという段階のお話しです(下記②の方)。

意味記憶-①スイッチON ⇒ ②引出しOPEN

一方、今回の提案は、「スイッチを複数用意する」という①に関するものです。

ここで問題です。
「留置権には物上代位性があるか?」

このスイッチONに対しては、ある程度、民法の勉強を進めれば、極めてスムーズに答えられるはずです。

では、次の問題。
「一般先取特権を除き、担保物権の中で、物上代位性がないものは?」

えーっと、確かテキストのあの辺に担保物権の比較表があって・・・・・。
んっ? これも留置権か!

そうですね、同じ留置権の特色を問うものでありながら、後の問題の方が少し時間がかかったはずです。
先の問題がなければ、なおさら。
もちろん、まだ担保物権全体の比較整理ができていない人は答えられません。

こんな風に私達は、同じ論点でもスイッチの入れ方次第で、間違ったり、時間がかかったりするわけです。つまり脳にとって、どんな形でスイッチを入れられるかというのは、極めて重要なことだということです。
脳にも好みのタイプと好みでないタイプがあるようです。
上記2つ目の問題に対しては、
「なんで今日はそんな所からスイッチを入れようとするかなぁ〜。そんなの用意してないんだけど・・・。」ってボヤいてるはずです。

では、その対処法を寝室に設置されている蛍光灯にたとえて考えてみましょう。
昔ながらの・・・であれば、もちろんスイッチは、あれです。
そう、紐で引っ張るタイプ。2本、1本、豆球、切る、4段階の切替えOK

そこで、一旦布団に入った後、寝る直前に半身起こして消すのであれば、これで十分です。ただ、部屋の外から入ってきて真っ暗な中で、この紐を探すのは、慣れれば出来なくはないけれど、毎日、結構ストレス。
そこで、面倒くさがり屋の人間は、直ぐにヒラメクわけです。
「入り口の壁にも、スイッチもう1個付けるか!」

そうなんです。
自分の用意しているスイッチが1個の場合には、本試験でこれと違うスイッチを入れられてしまうと、一気に暗闇の部屋に放り込まれた心境になります。

もちろん、ここで冷静になって、「いやここは、いつもの自分部屋じゃないか、だったら紐は・・・、ホラあった、あった」と処理できれば、それで良いわけです。
それがさっきの「本当にその論点を理解していたら・・・」に相当するのでしょう。

しかし、あらかじめスイッチを2個用意しておくのも、方法としてアリじゃないの?
ということです。
もし、自分が用意していったスイッチと、本試験でのスイッチが同じ場所にあれば、結果としてその方が、簡単に、素早く、しかも確実に答えを引き出せるわけです。
脳だってあらかじめ予約している客に対しては、それはもう機嫌よく、
「○○様、お待ちしておりました。」

つまり、過去問も記憶を引き出すスイッチの一つですが、同じ論点に対して異なった場所に複数のスイッチを用意することも、有効な解決方法であるということです。
過去問以外のOUTPUT教材として、「問題集」や「答練」の問題を解くということは、記憶を引き出す機会を増やすと同時に、別の角度から引き出すシステムを自分の脳にプログラムするということです。
これが今日のポイントです。

ただ、その数を増やせば、本試験でも同じ場所にスイッチが用意される可能性が高まるのは確かですが、スイッチをいくら増やしたこところで、もちろん限界があります。
やはり、本試験で違うスイッチを入れられてしまっても、ここはいつもの自分の部屋だと冷静になって、暗闇の中でも紐を見つけ出す能力を磨いていくこともお忘れなく。

また、いくらスイッチは多い方が良いといっても、何事も「過ぎたるは及ばざるが如し。」
スイッチばかり増えて、それが何のスイッチか分からなくなったというのでは、本末転倒です。

OUTPUTの材料としては、①過去問 ②問題集 ③答練(模試)。基本的には、これが必要かつ十分な範囲ではないでしょうか。

そして、スイッチの取り付けは、確実に1個1個確実に行なうこと。
4つのネジでとめることころを2つしか付いてないとか、3つ目が途中まででグラグラとか・・・。
そんな状態で、「よしっ、次のスイッチも!」
なんてやっても意味がないのは、誰もが想像できるところ。
どの教材も中途半端なまま、毎年数だけが増えていくなんて、時間とお金の無駄遣いです。

今年の本試験に標準を合わせてきた皆さんのOUTPUT教材は、どの状態ですか?
スイッチが足りないのか、グラグラの不安定スイッチか、まずはそのチェックを。
そして、切り替えるときは、中途半端にやらず一気にスパッと思い切ることです。

では、そのスイッチが入った時、どうすればスムーズに記憶の引出しを開けることができるのか?
次回は、そのお話しをいたしましょう。

講師 小泉嘉孝

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