kaz1116 2015-07-22 10:09:45
債権の消滅時効が完成してその援用がされた後にそのことを知らずに当該債権を譲り受けた者は、時効完成前に譲り受けたとすれば相殺敵状にあった場合に限り、当該債権を自働債権として、相殺をすることができる。
答えは×なのですが、いまいち意味がわかりません。よろしくお願いします。
回答順に表示 新しい回答から表示 参考になった順に表示
登場人物
アパートの大家 秋元康
先輩 指原莉乃
後輩 川栄李奈 アパートの住人
秋元「指原、おまえから昔借りてた借金はもう時効だから」
指原「秋元先生、そういうことを言うんですか。ずるいですよ」
頭の弱い川栄のことを思い出し
指原「川栄、秋元先生に貸してあるのを二割引きで売ってあげるけど、どうする?」
川栄「いいんですか。」
後日、秋元から家賃を催促された川栄
川栄「秋元先生への貸金と私の家賃、そうさつします。」
秋元「それ、そうさつではなくそうさいと読むんだよ。それにもう、その借金は時効だからなくなっているんだ」
川栄「嘘だろーが!!」
川栄卒業のきっかけとなったかどうかは・・・・・
参考になった:1人
senpai 2015-07-22 15:22:00
kaz1116さん、こんばんは。
まず、相殺の要件の一つとして、「同一当事者間に債権の対立があること」というのがあります。
AはBに100万円の債権を、BはAに100万円の債権を互いに有しているという状態ですね。
では、BはAから100万円を請求され、じゃあ「自分もあなたに債権があるから、これで相殺します。」と言おうと思ったら、その債権は既に時効にかかっていたという場合は、もう相殺できないのか?というのが、民508条の論点です。
もちろん、ここでの結論は、その相殺が認められていて、その理由として、当事者間の期待・利益を保護するためとなっています。
つまり、Bがこれまで「相殺する」と意思表示をしなかったのは、互いの債権が相殺適状(相殺の要件を満たしている状態)になった時点で、わざわざそんな意思表示をしなくても、当然にチャラになった(清算された)と考えるのが通常だから、それに法的効果も合わせようというものです。
そして、さらに本問のように、当該時効が完成した債権が債権譲渡された場合にも、譲受人は、その債権をもって相殺ができるのか?という論点に続いていきます。
たとえば、上記のBが当該債権をCに債権譲渡した場合に、(Aが元々Cに債権を有していることを前提に)Cから相殺ができるかという場面です。
しかし、この相殺は認められないとするのが判例です(最判昭36.4.14)。
この判例では、民508条は時効消滅前に「相殺適状」となっていたことを要求しているので、本肢のように既に時効が完成し、その援用がなされた後にそれを譲り受けても、これでは相殺適状となる前に債権が時効消滅しているため、その相殺は認められないということです。
そこで、上記民508条の制度趣旨である、「当事者間の期待・利益を保護する」というのは、あくまで債権発生当時の当事者(AB)を指すのであり、これを譲り受けた者(C)は含まれないということになります。
なお、この場合、譲受人(C)の善意・悪意は問いません。
講師 小泉嘉孝
参考になった:4人
koizumi 2015-07-25 19:42:24
小泉先生
たいへんわかりやすく教えていただきありがとうございます。
相殺の論点は互いに矢印が向き合っている者同士でなければならないという原則に気をつけて過去問をやっています。
追加の質問になりますが民法436条2項や457条2項はこの原則の例外と考えてよろしいのですか?
kaz1116 2015-07-26 05:38:39
kaz1116さん、こんにちは。
まったくその通りです。
民436条2項・457条2項、いずれも相殺の意思表示を行う者が、自ら有していない債権をもってこれを行うものであるため、例外的場面に該当します。
講師 小泉嘉孝
koizumi 2015-07-26 12:59:35