司法書士の勉強中に発生する疑問を解決する質問広場

/どうやって覚えるか?③/小泉嘉孝

koizumi  2015-08-07 15:26:00

エピソード記憶について。

 

平成20年の本試験で、こんな出題(不動産登記法)がありました。
A: 最後に、登記事項証明書の交付請求も電子申請によってすることができ
るけれど、その際には、請求情報に電子署名を行う必要があるかな。
B: 登記事項証明書の交付請求も、電子申請ですので、電子署名を行う必
要はありますが、電子証明書の添付は要求されていません。

司法書士事務所に勤めている補助者の方であれば、
何を当たり前のことを聞いているの?
みたいな話ですが、実務経験のない方にとっては、
テキストの記憶をたどっていって、登記申請との比較で・・・
となるわけです。

では、これは。
登記識別情報の失効を申し立てる場合
手数料はいくら?
印鑑証明書の原本還付は可能か?
資格証明書の原本還付は可能か?

この辺りになると、実務家である司法書士であっても
チョイと確認させて下さい・・・
となるのが、普通です。

実は、つい最近、登記識別情報の失効の申出をしました。
会社名義の不動産に関し、登記識別情報の盗難に遭われた方が相談にみえました。
印鑑と印鑑カードは大丈夫ということだったので、
今回は、不正登記防止申出はせず、
登記識別情報の失効で対応することになりました。

丁度、その日は登記所に行く用事があったので、
書面での申し出を行うことにしたのですが、
そこで貴重な経験をすることになります。

窓口で「失効の申出書を頂けますか」とお願いすると
いきなり「えーと、そんなのあったっけ?」みたいな話になって(笑)

あちこち引出し開けて、「あーあった、あった!」
「滅多にそんな申出はないからねー」
ということでした。

そして、さらに、
「手数料の印紙貼ってないよ。」
とか、
「資格証明書はコピーついてるけど、印鑑証明書は
原本還付しなくていいの?」
なんて、会話に。

もちろん、手数料はないし、有効証明とは異なり、失効の申出では
印鑑証明書の原本還付はできないのですが、
これによって、
「なるほど、それだけ失効の申出というのはなされていないんだ」
と実感できたわけです。

ただ、この経験によって、私もそして登記所職員の方も、
その手続きがしばらくは記憶としてバッチリ頭に叩き込まれたわけです。

もちろん、自己の経験を伴う「エピソード記憶」ですから。

そう、テキストを見て、頭に詰め込んだだけなら「意味記憶」、
自分の経験がプラスされているのが「エピソード記憶」でした。

当然、強く残るのはエピソード記憶です。
じゃあ、受験対策としては、できる限り「意味記憶」から
「エピソード記憶」に格上げしてった方が有利
ということになります。

今日は、その方法についてお話ししましょう。

もちろん、ベストなのは、実際に手続きをやってみる
ということですが、
司法書士事務所で勤務していない以上、
実際に経験する機会はないに等しいし、
たとえ勤務していても、テキストに出てくるものを
すべて経験できるなんてことはない。

特に刑法なんか、実際にやってみるわけには
いきませんね。

ただ、「経験」というのは、色々な形があるわけで、
「実体験」に限定して考える必要はない
ということです。

そこで、私たちにとって一番手っ取り早いのは、
問題を解いて「間違える」
という経験をすることです。

つまり、その問題を間違えて、
とても悔しい思いをしたという経験があれば、
それも、「エピソード記憶」になるといえます。

ならば、悔しい思いが強ければ強いほど良いわけで、通常は、
本試験 > 答練 > 過去問・問題集
という順番になるでしょう。

私も、いまだに20年前の本試験で間違えた問題を覚えています。

だから、「間違える」という経験は、
記憶として残すという意味では、
とても大切なことだということです。
これが今回のポイントです。

例えば、答練で間違えて、
「本番じゃなく、ここで間違っておいて良かったね。」
なんて励まされることがありますが、
それは本当にそうだ、ということです。


本試験で使える記憶を作るという本来の目的を考えれば、
たまたま正解して「答練で良い点数を取る」よりは、
遙かに実益があるといえます。

つまり、答練で何も間違わないというのは、
記憶を呼び出すスイッチにはなったけれど、
悔しいというインパクトが残らないのは、
エピソード記憶に昇格させるネタとはならず、
ちょいと勿体ないといえます。

ただ、沢山間違えば良いかというと、
そうではないというのは、
みなさんも既におわかりのとおりです。

間違う数が多すぎれば、
「悔しい」という思いも薄れてしまい、
エピソード記憶に昇格しないからです。

もちろん、最初は仕方ないわけですが、
特に答練に臨む段階では、
ほとんどの問題が正解できる(35問中30問以上)
状態にまで予習をしておかなければ、
そういう効果は期待できないということになります。

ゆえに、実力が備わっていない段階では、答練に対する
予習こそが、最高のペースメーカーとなるわけです。

他には、人に質問をする、あるいは人に教えるという
方法があります。
これも自分の経験が入るので、エピソード記憶に
昇格させるものとして有効です。

特に人に教えるという行為は、
そもそも自分が理解していない内容は人に説明できないので、
自分の理解を確認する、理解を深めるという点でも、
プラスになります。

ただ、これも私のように全範囲を講義することが日常化すると、
「意味記憶」のレベルに格下げされるということがありますが、
それは講師だけにあてはまる例外です。

そこで、小泉予備校立ち上げの際に考えたのが、
この「質問広場」のシステムです。

これは単に自分の疑問を解決するというだけでなく、
場面が変われば、今度は自分が相手に知識を提供して、
自分の理解を確認し、かつ、エピソード記憶に高める
という機能を持っています。

ここには、人に回答を要求する権利もなければ、
質問に答える義務もありません。
しかし、結果として、互いにプラスになるものを
残してくれます。

だから、みなさん遠慮せず、どんどん書き込んで下さい。

ただ、質問をする人にも、回答する人にも、
一定の緊張が強いられます。
その緊張感が、エピソード記憶に繋げてくれるのですが、
誰もが萎縮してしまうようでは、本末転倒です。

人にやさしく、楽しい質問掲示板であって欲しいと願っています。

次回は、エピソード記憶よりも弱い「意味記憶」。
この記憶の引出しを開けやすくするコツについて、
お話しいたしましょう。

講師 小泉嘉孝

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