koizumi 2015-10-22 18:15:52
「簡易組織再編」における株主からの差止請求について。
tocchiさんの質問に対する回答補足。
tocchi さん、こんばんは。
以前、質問にあがった「簡易組織再編」における差止請求に関する説明が言葉足らずでしたので、補足させて頂きます。
まず、「簡易組織再編」は、「株主への影響が軽微であるため、株主総会の承認決議を要しない場合」と一般的に説明されていますが、ここでもそのように定義しておきます。
そうすると、一定の要件を満たした場合に「簡易組織再編」が認められる会社は、下記のとおりです。
① 吸収合併における存続会社
② 株式交換における完全親会社となるべき会社
③ 吸収分割における分割会社
④ 吸収分割における承継会社
⑤ 新設分割における分割会社
そこで、上記各会社において、「簡易組織再編」となる場合においては、差止請求は認められません(会社法784の2ただし書、796の2ただし書、805の2ただし書)。
やはり、株主に対して与える影響が軽微であるためです。
ここまでは、以前説明したとおりなのですが、tocchiさんの質問文章の中に「消滅会社」とあり、当時、その質問の意図が掴めず、「(合併における)消滅会社」において、簡易組織再編というパターンはないはずで・・・と思い、簡易組織再編では、差止請求は認められませんと、さらっと結論だけ記載してしまいました。
ただ、この度、自分で講義をしている際に、tocchiさんは、吸収合併における存続会社が「簡易組織再編」の要件を満たしている場合に、消滅会社でも差止請求ができないのか?ということが知りたかったのではないかと、ふと気づきました。
結論からすると、上記のとおり、吸収合併における「消滅会社」においては、「簡易組織再編」となることはありませんので、原則どおり、差止請求の要件を満たす以上、消滅会社の株主から、消滅会社に対する差止請求は認められることになります。
これを踏まえ、まとめると下記のとおりです。
差止請求が認められる:○ 差止請求が認められない:×
① 吸収合併における存続会社:○ 簡易組織再編となる場合:×
消滅会社:○ ※簡易組織再編となる場合はない。
② 新設合併における消滅会社:○ ※簡易組織再編となる場合はない。
③ 株式交換における完全親会社となるべき会社:○ 簡易組織再編となる場合:×
完全子会社となるべき会社:○ ※簡易組織再編となる場合はない。
④ 株式移転における完全子会社となるべき会社:○ ※簡易組織再編となる場合はない。
⑤ 吸収分割における分割会社:○ 簡易組織再編となる場合:×
⑥ 吸収分割における承継会社:○ 簡易組織再編となる場合:×
⑦ 新設分割における分割会社:○ 簡易組織再編となる場合:×
講師 小泉嘉孝
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koizumi 2015-10-22 18:17:04