司法書士の勉強中に発生する疑問を解決する質問広場

/④会社法 欠格事由と兼任禁止の違いについて

sam1205 2015-11-13 18:24:35

会社法において役員の欠格事由と兼任禁止の違いがよくわからず,自分なりに調べてもどうもすっきりしません。

なんとなくのイメージとしては,例えばよく問題になる会計参与の欠格事由とは
条文333-Ⅲで会計参与になることができないものとして監査役があがっています。
すると,監査役である者を会計参与に選んではいけない。例え選んでも無効になる。

一方,監査役の兼任禁止では
条文335-Ⅱで監査役は会計参与を兼ねることができないとしています。
だから,会計参与である人を監査役に選んでもいいけれど,兼ねることができないので
その人が監査役の方がおもしろそうなので監査役の就任承諾をしてしまったら
なくなく参与をやめることになる。

すなわち,欠格事由は問答無用で禁止されるという厳しい規定だが
兼任禁止はそれほど厳しくなくて,どっちかを辞めればいいだけの話…
というような,ぼんやりとしたイメージでしかとらえきっていません。

そもそもこのような解釈で会ってるでしょうか?
記述式などでこの点を問われたらと思うとぞっとします。
特に本試験の午後,時間のない中でこれらの判断を迫られたら取り違えることが目に見えています。
登記できない事項としてあげるのか
就任登記と同時に辞任したとみなす登記として書くのか
その違いはとてつもなく大きいと思います。

スピード感をもって仕分けできる方法をどなたかご指南いただけませんでしょうか。

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条文の誤読から指摘すると,

>監査役は会計参与を兼ねることができない

会社法にこういう兼任禁止規定はありませんね。

監査役は,子会社の会計参与を兼ねることはできないという規定なら,あります(会社法335条2項)。
同項をよく読めば,会計参与・執行役は,いずれも子会社のそれです。

他方で,親会社の監査役は,会計参与になることができない,という欠格事由の定めもありません。

>会計参与である人を監査役に選んでもいいけれど,兼ねることができないので
>その人が監査役の方がおもしろそうなので監査役の就任承諾をしてしまったら
>なくなく参与をやめることになる。

そのとおりなんですが,これは,条文333-Ⅲの欠格事由に該当することが理由です。

一般的に言って,
会社法では,一方の資格Aについて,他方の資格Bが兼任禁止に当たると規定する場合,
資格Bにとって,資格Aであることが欠格事由に当たる,という規定は置かれません。
また,ある資格Aがある資格Bにとって欠格事由であると規定されている場合,
資格Aについては,資格Bを兼任禁止としたり,欠格事由とする規定はありません。

上記は,あまり人の指摘しないところですが
(いいかえれば,拠るべき文献のないことですが),
私の見る限り,各資格ごとに条文を調べていけば,そうなっています。
(例外があったら指摘していただけるとうれしいです)

以下,例示します。

取締役については(監査等委員や指名委員会等設置会社の取締役を除き)兼任禁止規定がなく,
株式会社における他の資格を欠格事由とする規定もありません。
他方で,監査役については,取締役を兼任禁止とし,
会計参与については,取締役を欠格事由とし,
会計監査人についても,取締役を欠格事由としてます。

また,取締役・会計参与・監査役のいずれについても,
会計監査人を兼任禁止にしたり,欠格事由にする規定はありません。
しかし,会計監査人にとっては,
当該会社の取締役・会計参与・監査役の全ての資格が欠格事由です(337条3項1号)。

>すなわち,欠格事由は問答無用で禁止されるという厳しい規定だが
>兼任禁止はそれほど厳しくなくて,どっちかを辞めればいいだけの話…
>というような,ぼんやりとしたイメージでしかとらえきっていません。

大体このイメージであってます。

欠 格 事 由に当たる者の選任決議は無効,
後で欠格事由に該当したら即ち資格喪失。まさしく問答無用。

兼 任 禁 止規定が問題になる事案は,
記述式の過去問で何回か出ているので(平成16,24,27),
これらに当たって研究されることをお勧めします。
平成27年問3では,後から親子会社の関係が成立し,
兼任禁止規定に触れる場合,
親子のどちらにおける地位を辞任したものと解する,
という推認が働かないため,
株式交換による親子会社関係成立前にあらかじめ子会社における地位を辞任したのはなぜ?
という聞き方になっています。

繰り返しになりますが,仕分けの一助として,
ある資格と他の資格の兼任関係を規律するのは,
兼任禁止規定又は欠格事由のいずれか一方であって,双方が衝突することはない,
ということを押さえておくといいんじゃないかと思います。

言うまでもなく,全然規律がない(たとえば,三委員会の委員の兼任可能)こともあります。

参考文献

『論点解説 新・会社法~千問の道標』
376ページ~
396ページ~
『商業登記ハンドブック』
3版451ページ
2版449ページ

 余計なことですが,
商法学者の中には,上記のような
立案担当者による兼任禁止規定と欠格事由の峻別にかかわらず,
会計参与に関する333条3項1号につき,
監査役の兼任禁止と同じ解釈でよいという人もいます。
(江頭憲治郎『株式会社法』)









参考になった:7

kilroy2014 2015-11-14 16:31:38

kilroy2014様

以前の私の投稿で、貴重な時間を使わせるようなことになりまして申し訳ありませんでした。さらに、サポートまでしていただきありがとうございました。あの時は少し感情的になりすぎて投稿してしまい、非常に恥ずかしいです。

チョットした機会に恵まれkilroy2014さんのコメントを読ませていただき、これは一言ご挨拶を申し上げなければいけないと思っておりました。こちらでコメントをしていればいつかは出会えるのではと考えていたところに、kilroy2014さんの投稿を見つけることができうれしく思います。

私もkilroy2014さんの細かいところまで行き届いた回答に感服し、参考にさせていただいております。今後とも何か機会がありましたらよろしくお願いします。

最後に、この板を私的に利用してしまい事務局の方々及びその他の皆さまにご迷惑をおかけしました。すいませんでした。

bolza

投稿内容を修正

bolza  2015-11-15 23:11:38

kilroy2014様

丁寧なお答えをいただきありがとうございます。
お礼が遅くなり申し訳ありませんでした。
また誤読のご指摘誠にありがとうございました。
思い込みと理解の浅さに恥ずかしい限りです。

「親会社」の会計参与が「親会社」の監査役に選任された場合には,
兼任禁止でなく,参与の欠格事由から来るものという理解でいいのでしょうか。

資格がダブったときの欠格事由があるのは
会計参与と会計監査人でした。
取締役などはそもそも会計参与に選任できないので
例え選ばれてもその決議が無効であり,
反対に会計参与が取締役に選任されても無効というのでなく
参与をやめればいいだけの話ですよね。

また兼任禁止は監査役が関わっている時だけでした。
この監査役の兼任禁止については,ご指摘のように
もう少し過去問をあたって見ようと思います。
組織が変わったことにより兼任禁止にひっかかったりする
複雑な問題構成のような危険な香りがします。

ありがとうございました。
こうして書いているだけでも,また「こんがらがりそうな」
いまだ危なっかしい理解力ですが…

sam1205

投稿内容を修正

sam1205  2015-11-17 18:58:06

bolza様

ありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。


sam1205様

>「親会社」の会計参与が「親会社」の監査役に選任された場合には,
>兼任禁止でなく,参与の欠格事由から来るものという理解でいいのでしょうか。

同じ株式会社の,ということであればおっしゃるとおりだと思います。
理屈から言えば,登記手続上,
会計参与の退任登記の原因は「資格喪失」(会計参与が欠格事由に該当したことの効果だから),
日付は監査役就任の日
ということになるのでしょう。

しかし,記述式でそのように出題された場合に
一つ困ったことがあります。

それは,このような場合,
退任を証する書面(商業登記法54条4項)をどう表記すればよいか,
触れている文献がなく,よく分からないということです
(理屈から言えば,監査役の就任登記に関する添付書面が,
会計参与の資格喪失を証する書面になるだろうとは思いますが)。

もっとも,問題中に,監査役としての就任承諾の前に,
会計参与を辞任した,などの記載があれば(無難な出題のしかた),
辞任届等を添付し,権利義務を承継していない限り,
素直に「辞任」を原因として書けばいいことになります。

ただし,これは,兼任禁止に触れる地位への就任承諾をもって
従前の地位を辞任する意思表示と解する,
という監査役の兼任禁止規定に関する解釈に基づくもの(平成24年記述式のケース)とは違い,
文字どおりのただの辞任ですね。


投稿内容を修正

kilroy2014  2015-11-19 16:12:35

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