oreday 2011-11-02 20:17:46
他人の材料を使って加工をした場合の所有権の帰属についてです。
【問題】Aは、Bから依頼を受け、動産甲に工作を加えて動産乙を作成した。乙の価格が著しく甲の価格を超えている場合であっても、甲がBの所有物でなかったときは、Aは、乙の所有権を取得しない。
【解答×】工作によって生じた価格が著しく材料の価格を超えるときは、加工者Aが所有権を取得する。加工の対象となった動産がBの所有物であるか否かは影響しない。
【疑問点】テキストには、「洋服の仕立て業者が客から仕立てのために預かった洋服生地を加工して洋服に仕立てた場合は、通常、仕立上がった洋服の所有権は客に帰属するとの特約があると考えられ、所有権は注文者である客に帰属する。」とあるのですが、この問題の場合は、業者ではないから特約があるとは考えないとうことなのでしょうか?依頼して加工してもらっているのに、価値が上がったら所有権を取られるというのはとても不自然だと思うのですが・・・
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前者のポイントは、加工がもともと他人物を勝手に使用した場合、その所有権がどうなるか、というものであるということです。
通常「依頼を受け」というような契約がない場合を想定しています。
後者は、ズバリ常識的に「請負契約」が締結されたと考え、所有権が移転しない、ということです。
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eikuranana 2011-11-01 11:05:46
あくまでわかりやすいような設定で説明します。
AKBの前田あっちゃんが、暇つぶしに机の上にあった新品のノートに、サインの練習とか漫画とかを書きました。
それを見ていた甲が、そのノートを1000円で売ってほしいと言いました。
ノートの値段は、100円で、乙が置き忘れたものでした。
取りに来た乙が、「このノートは自分のものだから、1000円は自分に受け取る権利がある」といった場合どう処理するのか。
たまたま置き忘れた乙が900円得をするのか。
それとも、前田さんが1000円受け取って、ノート代100円を乙に支払うのか。
このように、乙と前田さんには契約関係がないときどうするか、というのが「添付」の射程範囲です。
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eikuranana 2011-11-01 11:33:34
eikurananaさん、わかりやすく例えていただいてありがとうございます。
このケースだともうちょっと良い値がつくかも知れませんね。
冗談はさておき、今回の問題の場合、Aは勝手に加工しているわけではなく、Bからの「依頼を受けている」のにもかかわらず、所有権を取得するという点がひっかかっています。依頼を受けていても業者でなければ特約はないものと考えられるのでしょうか?
oreday 2011-11-01 22:25:56
【問題】Aは、Bから依頼を受け、動産甲に工作を加えて動産乙を作成した。乙の価格が著しく甲の価格を超えている場合であっても、甲がBの所有物でなかったときは、Aは、乙の所有権を取得しない。【解答×】
試験問題を読み解くときに、まず、どれに注目するかを決めます。
まず「Bから依頼を受け」
これは不要な言葉です。
引用
「契約を結ぶ、という具合に契約関係があるのが普通だからである。そしてその場合、所有権の帰属については契約で決まる。
添付の規定はこういった契約のない例外的な場合にのみ適用されるにすぎない」
「民法1」内田 貴 東京大学出版会
引用終了
この言葉があることにより、契約があるので所有権はその契約により決まります。所有権の帰属につき断定しているので誤りとなります。
次に「Bの所有物でなかったときは」
これは、ミスリードのための言葉です。
先の「Bから依頼を受け」を削除したとして、問題文を変形してみると、
著しく甲の価格を超えている場合に、甲がBの所有物であったなら、Aは、乙の所有権を取得する。
添付の規定は、所有者が異なる場合や他人のものに加工したとき、それが新たな所有権の帰属原因になるかどうかの要件を定めたものなので、Bのものか第三者のものをBが持ってきたものなのかは無関係です。よって誤りと判断します。
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eikuranana 2011-11-02 08:31:41
非常に詳細に解説していただき、ありがとうございます。
どうやら依頼=契約と思い込んでいたから、理解できなかったようです。
契約はないから特約も無い、ってことですね。
スッキリしました!
簡単な単語の意味を誤解しているのは怖いですね・・・
oreday 2011-11-02 09:34:26
イ AB間で何らかの契約があったことは間違いないと思います。あなたが指摘するように、問題文に「依頼」とあるからです。しかし契約の内容は、問題文からはわかりません。乙の所有権はAに帰属するという契約かもしれませんし、Bに帰属するという契約かもしれません。通常はBだろうということは、一応いえますが、契約自由の原則上、断定はできません。あなたが拘る「業者」かどうかは関係ありません。Aだとすると問題として面白くありませんので(乙の所有権がAに帰属するという点で争いはないでしょう)、仮にBに帰属する契約内容だとして先に進みます。この場合に、契約は債権的には有効と考えるとしても、物権的に有効といえるかどうかが問題となります。なぜなら、Bは甲の所有者ではなく、処分権限も有しないと解されるため、物権的には無効、つまり物権変動を生じさせることはできないと解されるからです。この点は、他人物売買を想起してください。
ロ 次に、甲の所有者(以下仮にCという)とAとの関係を検討します。契約の相対効の原則からは、AB間の契約がCを拘束することはありませんので、AC間では、加工の規定によりAに所有権が帰属すると解されます。
ハ 仮に、AB間の契約により物権変動が生じると解すると、①AB間では乙の所有権はBに帰属するが、AC間ではAに帰属すると解するか、②AB間でもAC間でもBに帰属すると考えるかのどちらかになると思います。この点、①は法律関係を複雑にするため疑問ですし、②は契約の相対効の原則に反しないか疑問です。
ニ そうすると、イで論じたように、AB間の契約により物権変動を生じさせることはできず、AC間はもちろん、AB間でも、加工の規定により乙の所有権はAに帰属すると解するのが妥当と思います。
要するに、AB間の契約内容がどのようなものであれ、Aが乙の所有権を取得する(Bが所有権を取得する場合は存在しない)ということです。
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jiro180 2011-11-02 14:53:06
とても詳しく説明していただいてありがとうございます。
着眼点はあながち間違っていなかったようでちょっと嬉しいです。いろいろな可能性を示していただけたことで、民法を考えるときはこんな風にするんだなと勉強になりました。しかしこういうハマリ問題は困りますね・・・
oreday 2011-11-02 20:17:46