司法書士の勉強中に発生する疑問を解決する質問広場

/平25年29問オについて

kaz1116 2016-03-10 16:29:27

株券発行会社が自己株式の処分により株式を譲渡する場合には、当該自己株式に係る株券を交付しなくても、その効力を生ずるが、株券発行会社である親会社に係る親会社株式の処分により株式を譲渡する場合には、当該親会社株式に係る株券を交付しなければ、その効力は生じない。

会社法128条1項ですが、この違いの理由が分かりません。よろしくお願いいたします。

 

会社法128条1項
 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。

会社法129条1項
 株券発行会社は、自己株式を処分した日以後遅滞なく、当該自己株式を取得した者に対し、株券を交付しなければならない。

 肢の後段から説明します。

○ 株券発行会社である親会社に係る親会社株式の処分により株式を譲渡する場合には、当該親会社株式に係る株券を交付しなければ、その効力は生じない。

これは,会社法128条1項本文がそのまま適用される一例です。

株式会社も(当たり前ですが)他の株式会社の株式を保有することがあり,また,それを処分して譲渡することについては,会社法上,特に規制はされていません。

そして,当該他の株式会社が,株券発行会社であり,かつ,親会社である場合における株式の譲渡方法について,特に例外はありません(親会社株式の取得・保有自体に係る規制(135条)はあります)。

よって,親会社が株券発行会社であれば,その株式の譲渡を子会社がする場合でも,株券の交付が効力要件となります。

 肢の前段

○ 株券発行会社が自己株式の処分により株式を譲渡する場合には、当該自己株式に係る株券を交付しなくても、その効力を生ずる

これは会社法128条1項ただし書そのものであり,正誤の判定についてはこれで終わりです。以下では,イメージしやすいように補足説明を試みます。

一般に,他の株式会社の株式の取得及び譲渡については会社法上の制約はありませんが,自己株式の取得・処分については,規制だらけです。任意のやりかたで売り買いすることはできません。

株式会社が自己株式の処分により株式を譲渡することができる場合の典型例は,募集株式の「発行」と同じ手続で自己株式を処分する場合です(会社法199条1項柱書)。そして,募集株式の引受人が株主となる時期は,たとえば払込期日とされています(会社法209条1項)。
しかし,募集をしているのが株券発行会社である場合,会社法128条1項本文は,株主となる時期に関する規律と衝突する可能性があります。
たとえば,払込期日の経過後に株券が交付された場合を考えてみてください。

そこで,会社法128条1項ただし書という例外が設けられ,
募集株式の引受人その他の,株式会社から自己株式を取得した者は,株券の交付がないまま,株主となる(株券発行会社の株式を取得する,株式の移転の効力を生じる)こととされているのです。

そして,株券の交付がないまま,株券発行会社の株主になった者に対し,株券発行会社は,遅滞なく株券を交付しなければなりません(会社法129条1項,非公開会社における例外が同条2項)。

 なお,自己株式の処分を伴わない募集株式の「発行」を受けて株主となることについては,いわば原始取得であり,株式会社から引受人への譲渡に当たらないので,会社法128条や129条の守備範囲ではありません(215条1項参照)。










参考になった:3

kilroy2014 2016-03-11 00:29:33

とても詳しい解説ありがとうございました。
理解出来ました。

またお世話になる時は、よろしくお願いいたします。

投稿内容を修正

kaz1116  2016-03-11 07:11:56

質問タイトル画面へ