piyopiyo 2012-06-23 11:50:06
未成年者Aが母親Bの宝石を独断で自己の所有物としてCに売却した場合において、ある解説サイトでは
「Aは未成年者であることからCは宝石を即時取得できない。母親BはA・C間の売買契約が
取消されなくても、所有権に基づいて、宝石の返還を請求することができる」としています。
そしてその解説として、民法192条「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」を引き合いに出し、
この「取引行為」とは有効な取引行為であることが必要であるため、Cは即時取得の要件を満たしていないと
しています。
ここで質問なのですが、未成年者(制限行為能力者)による法律行為は、そもそも有効になり得ないものなのでしょうか?
未成年者(制限行為能力者)による法律行為は、「取り消すことができる」という認識でいたものですから、
どうしても理解できません。
何卒よろしくお願いします。
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Cは、宝石のような高価なものを買うのだから、Aが未成年かどうか確認しなければならない。
それが一般常識人の対応。
よって、Cには過失がある。
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eikuranana 2011-11-28 16:40:19
ここで問題となるのは過失云々ではない。
制限行為能力者によってなされた行為は取り消すことができるとなっていて、この制度趣旨は制限行為能力者の保護。にもかかわらず即時取得が成立してしまうとすれば、この制度趣旨の没却になりかねないから、即時取得よりも未成年者保護に重きを置いていると捉えるべきですよ。
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tatsuya19 2011-11-28 18:57:20
未成年者の保護?
即時取得が否定されて保護されるのは、所有者である親です。
別に、未成年者が不利益を受けるわけではない。
大事な婚約指輪が他人の手に渡るのを防ぐことは、親にとって利益であり、未成年者の利益となるわけではない。
親は、子の行為に対して、申し訳ないと思えば、追認すればよいのだから。
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eikuranana 2011-11-28 20:13:34
大事な婚約指輪だという内容は、質問者からの問題文にはどこにも書いてありません。そのような条件のもとで他の事例にも対応する根拠を導くことは不可能だと思いますよ。余計な条件をつけずに、一般的な事例を常に想定することが法律を学ぶうえで大事だと思います。そもそもAが未成年者であることの確認をしなかったことが、即時取得で要求される無過失要件における過失だと判断している点に誤りがあります。Aにその物の処分権限があることについての確認についての過失があるならともかく。
tatsuya19 2011-11-30 02:11:56
平成6年7アとイに似たような出題があります。この過去問アでは,「未成年者であることを理由に取り消した場合」を前提に即時取得の成否を聞いています。これに対してご質問では,「未成年者Aが母親Bの宝石を独断で自己の所有物としてCに売却した場合」を前提に即時取得の成否を聞いています。両者は前提が異なりますが,これは問題を解決するのに何か関係があるのでしょうか。他に,平成9年15イ(前主が無権利者ではない),平成17年9ア(前主が無権利者ではない),から出題があります。即時取得の要件は,「①目的物が動産であること,②前主が処分権限のない者(無権利者)であること,③有効な取引行為が存在すること,④取得者が平穏・公然・善意・無過失に占有を始めたこと」とされています(内田民法Ⅰ第4版)。即時取得制度の趣旨は,「無権利の動産占有者を真実の権利者であると信じ,これと取引関係に入った者を保護すること」だとされています(コンメンタール民法)。制限行為能力者を保護する制度は,「判断能力の欠けている者や劣っている者は,自由競争の不当な犠牲とならないように,かえってこれを保護しなければならない。正常な判断能力があってこその自由競争であり私的自治なのだから。」という思想のもとにあります。そもそも,未成年者(制限行為能力者)による法律行為の民法の制度趣旨と,即時取得の民法の制度趣旨は異なり,別物です。これらを混同すると議論が混乱するように思います。ただ,私は,piyopiyoさんが今回もたれた疑問の内容には共感を覚えます。なぜなら,ある解説サイトの記述内容や過去問の出題のされかたからそう疑問を抱いても不思議はないなと思うから。即時取得制度の趣旨から,Aが未成年かどうか確認しなければ過失があったとされるのでなく,「Aが権利者であると信じたことにつき過失があったかどうか」が問題です。繰り返しですが,制限行為能力者制度と即時取得制度を区別して考えることがポイントです。
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children14 2011-11-29 01:22:58
children14さん丁寧な解説ありがとうございます。
eikurananaさん、tatsuya19さん、ありがとうございました。
私自身、過失の有無や制度の主旨など、違った方向での考察が足りなかったようです。
ただ私の小さな脳みそでは時間がかかりそうですが…
こうして皆さんの解説を読んでいると、そもそもその解説サイトの過去問の出題のされかた、解説のされかた
のほうに疑問を感じてきました。結局そこでは「有効な取引行為ではなかったから」を前提にし、それ以上の解説はありませんでした。もしかしたら、なぜ「有効な取引行為ではない」のかに着目することに無理があったのかもしれません。皆さんの解説、大変参考になりました。ありがとうございました。
piyopiyo 2011-11-29 13:35:37
Ⅰ 取消可能な契約も、取り消すまでは有効な契約です。そして、取消権を行使するかどうかは、取消権者の自由です。
Ⅱ 即時取得の要件として、「有効な取引行為」であることが必要です。
Ⅲ 本問では、おそらく、まだ取り消していないでしょうから、Ⅱの要件を満たし、即時取得の余地があります。
仮に、既に取り消しているのであれば、Ⅱの要件を欠くため、即時取得は不可能です。
Ⅳ 即時取得の余地がある場合には、即時取得の他の要件を満たすか検討する必要があります。
Ⅴ 本問では、まず、「取引行為に基づく引渡し」の有無が問題となりましょう。
この点は、問題文に「返還を請求」とあるので、Cに対する占有改定以外の引渡しがあったと考えるのが素直だと思いますが、断言はできません。「返還を請求」というのは、BのAに対する請求と解する余地もあるからです。
Ⅵ 次に、「過失」の有無が問題となりましょう。
この点ついては、結論から言えば、問題文からは判断できません。
過失の有無は、「処分権限」についての調査義務の存在とその義務の懈怠の有無により判断されます。
この調査義務というのは、「処分権限」(Aが所有者かどうか)についての調査義務であり、「処分能力」(Aが未成年者かどうか)についての調査義務ではありません。
本問では、「宝石」であることから、ただちに調査義務ありとすることはできません。
たしかに、売買代金が高額であればあるほど、調査義務を肯定する方向に作用します。
しかし、宝石の値段はピンキリで、数千円の宝石も珍しくはないので、問題文に売買代金額が示されていない以上、売買代金額が高額だと断言はできません。
この点、例えば、仮に宝石が指輪であったとして、Bの名前が刻んであったという場合であれば、Aに身分証明書の提示を求めて、名前を確認するなどの調査義務の「存在」を肯定する余地があるでしょう。
しかし、仮にAがCの求めに応じて、Aの写真付でB名義の精巧に偽造された免許証を提示したのであれば、調査義務の「懈怠」は否定されるのではないでしょうか。
Ⅶ 長々と書きましたが、要するに、問題文に現れた事情からは、即時取得するのかどうかは、判断できないということです。
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jiro180 2011-11-30 02:33:36
jiro180さんありがとうございます。即時取得について大変詳しく解説していただいて、いい勉強になりました。特に過失の有無についての具体的な解説は非常に解りやすく、感謝です。
piyopiyo 2011-11-30 21:19:51
未成年者が、給料三カ月分の価格の指輪をもっていることに不審を抱かないことは、過失がある。
法律は、一般常識人を基準にする。
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eikuranana 2011-11-30 11:04:16
極めて、簡単な問題です。未成年者との動産取引に即時取得の適用はありません。
理由は未成年者の保護です。保護されるのは親であって未成年者ではない、という投稿がありましたが、未成年者は、不法行為責任を追及されますから、即時取得が適用されないこととして、未成年者を保護しているのです。つまり、現行法は、動産の動的安全より、未成年者保護を優先させたわけです。相手方の善意・無過失の問題とは、関係ありません。
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saitama 2012-06-22 10:19:05
piyopiyoさん、こんばんは。piyopiyoさんの疑問は、確かに「取引行為が有効であること」が即時取得の要件となっているが、未成年者(制限能力者)との取引であっても、「一応有効」である。にもかかわらず、なぜ即時取得が成立しないのか?ということだと思います。もっともな疑問であり、着眼点がずれてるなんてことはないですよ。ここでの「有効」という意味は、「取引行為に瑕疵がない」というところまで要求されています。つまり、制限能力者との取引や詐欺・強迫に基づく取引は、確定的に有効ではなく、一応有効に過ぎないということは、それは「瑕疵ある取引」だということを意味してします。よって、未成年者(制限行為能力者)との取引では、「取引行為が有効であること」という要件をみたしておらず、即時取得は成立しないことになります。この論点の詳細は、また明日! 小泉嘉孝
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koizumi 2012-06-22 21:32:00
即時取得における善意・無過失とは、「取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し、かつ、かく信ずるにつき過失のなかったことを意味する」(最判昭26.11.27)というのが判例です。ただ、無権代理人や制限行為能力者からの取引では、相手方が何を信じたのかについて、別の視点から考察する必要もあります。まず、①Aが所有する動産を無権代理人BがCに売却し、CがBに「代理権があると誤信した」というケースです。やはり、ここでも代理権の欠缺という形で取引行為に瑕疵があり、即時取得の適用はありません(表見代理での保護が残るだけです)。次に②Bに代理意思がなく、自己の所有物として当該動産をCに売却したというケースでは、無権代理ではなく、他人物売買であり、CがBを「無権利者でないと誤信した」というのであれば、即時取得が適用されます。元々、無権代理や表見代理の場面ではなく、ここに即時取得を成立させても、それらの制度の趣旨を没却することにはなりません。つまり、ここでのCの誤信の対象は、①「代理権があると誤信した」というケースと②「無権利者でないと誤信した」というケースの2つのパターンを考えなければならないということです(厳密には双方を組み合わせたケースも想定できます)。では、これを制限行為能力者からの即時取得にあてはめてみましょう。①Aが所有する動産を未成年者Bが自己の所有物としてCに売却し、CがBに「行為能力があると誤信した」というケースです。前記のとおり、ここでも取引行為に瑕疵があり、即時取得の適用はありません。では、②CがBを「無権利者でないと誤信した」というケースはどうでしょう。やはり、これも取引行為に瑕疵があると点は①と同様であり、また、制限行為能力者保護の制度趣旨が没却されてはならないという点も同じであるので、即時取得の適用はありません(平成6年第7問アイの出題はこれに該当します)。ただ、未成年者(制限行為能力者)からの取引では、もう1つの論点があります。それは、③未成年者A自身の所有する動産がBに売却され、これが制限行為能力を理由に取消された場合にBが即時取得を主張できるかという問題です。ここでは、未成年者Aが所有者なので、Bの誤信の対象は、「行為能力があると誤信した」というものしか想定できないわけですが、そもそも即時取得が前主の占有を信頼した(権利が存在すると信頼した)者を保護する制度である以上、前主が「無権利者」であることが前提であり、このケースに即時取得の適用がないのは当然だといえます。ゆえに、このケースで即時所得が論点となるのは、Bからさらに当該動産を譲り受けたCについてのみであるという結論に達します。以上を踏まえて、民法テキストⅡP78~81を見直してください。 小泉嘉孝
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koizumi 2012-06-23 11:50:06