司法書士の勉強中に発生する疑問を解決する質問広場

不登法/不動産登記令7条1項5号ハ

himekichi 2012-01-04 14:40:03

不動産登記令7条1項5号ハの射程が分かりません。例えば根抵当権の極度額増額変更では、必ず付記で実行されるとして、その根拠条文に令7条1項5号ハ(利害関係人の承諾が効力要件)を挙げています。他方で、抵当権の債権額増額変更では、登記の目的に(付記)と記載するとして、利害関係人の承諾が得られなければ主登記になる余地を認めています(利害関係人の承諾は対抗要件に過ぎない?)。後者では令7条1項5号ハについて言及されていません。どちらも利害関係人が存在する事例であるのになぜ令7条1項5号ハの適用が根抵当権の事例の場合だけにあるのでしょうか。令7条1項5号ハの文言からは判断が出来なかったのでどうかよろしくお願いします。

 

不動産登記令7条1項5号ハの射程は,端的に言ってしまえば,実体法を根拠とするものです。
例えば,根抵当権の極度額増額変更は,民法398条の5において「利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない」と決められています。
なので,この場合利害関係人の承諾は,実体上の効力要件なんです。
登記手続き以前のレベルの問題なんです。
登記官の立場から考えてみると,民法にそう書かれているんだから,
極度額変更登記の申請に利害関係人の承諾書がなければ,民法上無効なものを受理できるはずはありません。
なので,根抵当権の極度額変更登記申請は,利害関係人がいる場合,その承諾なしに登記が入るという余地はないため,必ず付記登記で入ります。申請書に「(付記)」をつける必要もありません。

他方,抵当権の債権額増額変更は,利害関係人の承諾があろうがなかろうが,当事者同士の合意だけで成立します。(利害関係人の承諾を要するという民法条文は存在しない。)
ただ,登記の対抗問題として利害関係人の承諾が問題となってきます。登記記録上の利害関係人がいる場合であってその利害関係人の承諾がなければ,登記官はこれを主登記で入れなければなりません。(もし付記で入れたら,登記官は利害関係人に怒られます。登記法66条参照。)
承諾書をつけて申請するときに,申請書に「(付記)」と書くのは,手続き上,主登記・付記登記いずれでも入る可能性のある登記なので,「利害関係人の承諾をつけて申請するんだから,必ず付記でやってくださいよ!」という「念を押す」意味であると考えるといいでしょう。
(もし,主登記で入ったら,司法書士が抵当権者に怒られます。)

さて,長々と説明しましたが,7条1項5号ハの承諾は,必ず根拠となる実体法(民法・会社法・農地法等)があるというワケです。そこに注目すればいいですよ。蛇足ながら,後続のチェックポイントとして,承諾日付と原因年月日の日付がズレるかズレないか,という点も含めて押さえるといいですよ。基本,不動産登記令7条1項5号ハの承諾は,日付はズレない(∵承諾が効力要件であるものが多いから) が,ズレるものもいくつかある(効力要件ではないもの,例えば,未成年者の法定代理人の同意,取締役の利益相反取引における株主総会議事録,賃借権(譲渡転貸を許す定めが登記されていない場合)の譲渡・転貸の貸主の承諾…)という感じで押さえるといいかと思います。

参考になった:21

neonext 2012-01-04 11:21:26

ものすごく良く分かりました!詳しい解説ありがとうございました!

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himekichi  2012-01-04 14:40:03

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